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news commentary

G-7 2020

2019-10-22 01:07:31 | 国際

アメリカのトランプ大統領が勢いを失いはじめている。下院で過半数を占める民主党が腹をくくって大統領罷免を目指して調査を進めている。大統領のスタッフがその調査に応じて議会で証言し始めた。バイデン元副大統領の子息のウクライナでの仕事に関して、不正があったのかどうか調査するようにウクライナ大統領に圧力をかけた疑惑が膨らんでいる。調査に応じないと軍事援助を止めるとおどしをかけたとされている。シリア北部から兵員引き上げ命令をだして、外交関係者から批判を浴びている。さらに、来年のG-7サミットをトランプ一族が経営するマイアミのゴルフ・リゾートで開くと表明した。

共和党議員は今のところトランプ氏を擁護しているが、彼の足元の泥沼が深まりって、身動きがままならなくなれば、大統領と心中することを嫌って、じわじわとトランプ離れを起こすかもしれない。とくに、トランプ氏が経営するゴルフ・リゾートでのG-7開催計画には、共和党議員のあいだにも強い批判が生じた。

そういう事情で、トランプ大統領はマイアミのゴルフ・リゾートでのG-7開催計画を取り下げた。あのゴルフ・リゾートは経営不振なので、トランプ氏はG-7で一息つこうと考えたらしい、という街のうわさに、彼は激高したのかもしれない。「あの計画を発表した時、各国の代表を無料招待すると言い添えていたはずだ」と負け惜しみのようなことを言った。

まったく、この愚かさにはたまげてしまう。

G-7はトランプ大統領の猛反対によって過去2年間、保護主義貿易に反対する文言を共同声明に書き込めないでいる。前回は共同声明そのものが出せなくなり、G-7の意義も揺らいでいる。

保護主義批判をきらうトランプ氏が大統領であるかぎり、G-7 2020でも共同声明は出せない可能性が強い。

各国首脳が2020年もまたトランプ氏の意向を汲んで保護主義反対の姿勢を鮮明にできなかった場合、「トランプ氏のポケットマネーで招待されたG-7だったからだ」と、各国でそれぞれの首脳に対して厳しい批判の声が上がるだろう。

普通の政治家なら、そのような事態になることを懸念して、G-7への出席を取りやめるだろう。G-7の終焉である。トランプ氏はそれを望んでいるのかもしれない。だが、それによって、トランプ氏はエゴとナルシシズムを満足させる機会を一つ失うことになる。

トランプ大統領のシリア北部からの撤兵で、トルコが国境を越えてクルド武装勢力を攻撃した。攻撃を受けたクルド武装力はシリアに応援を求め、シリア寄りのロシアがトルコとシリアの間に割って入る事態になっている。米兵力の事前準備なしの撤兵が力の真空を生じさせて、事態を一変させた。

米―トルコ関係が冷却する中で、トルコのインジルリク米空軍基地に貯蔵されている戦術核兵器50発がトルコの「人質」になっているとの不安が生じている。先日ペンス米副大統領がアンカラにいったのも、その核兵器に関してエルドアン・トルコ大統領と協議するためだった、という観測を米国のメディアが流している。ということは、米国政府の周辺に、そういう見方をするものがいるということになる。

きな臭い臭いが漂い始めた。トランプ大統領が就任したとき「パンドラの箱」の蓋があいた、と騒いだメディアがあった。大統領の核のボタン管理は大丈夫か、という不安が記事になるのは、さて、この年末ごろか。

 

(2019.20.22 花崎泰雄)

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