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極意としての「なりゆき」

2023-06-23 00:23:42 | 政治

「なりゆき」とは日本語辞典によると、自分の意志を持たず、ただただ物事の変化とその結果に身を委ねることをいう。岸田首相の権力維持の要諦はなりゆきまかせにあるようにみえる。

首相秘書官に任命した実の息子の海外出張時のショッピングや、首相公邸での親族を集めて宴会などの醜聞には、どこ吹く風を決め込んでいたが、周辺からの批判が高まると、あっさりと息子を秘書官から解任し、一件落着とケロッとしている。

G7の広島サミット開催で自慢顔だったが、世界政治の進展という面では目を見張る議論は報道されなかった。G7の首脳を広島平和記念資料館に案内し、40分をかけて展示品をみせ、自らが説明役を務めたそうだが、日本政府は彼らがどのような資料を見たかについては口を閉ざした。

6月21日に閉会した通常国会では防衛費の増額に対応するための財源確保法や、改正入管法、改正刑法、LGBT理解増進法を成立させた。いずれも野党に政治的体力があれば、そうとうもめる可能性があった法案だが、非力な野党という状況下で成立した。

2024年の秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに統合することもきめた。マイナンバーカードをめぐる混乱が収まらない中で、岸田首相が通常国会閉会にあたって、混乱については陳謝するが、保険証は予定通り2024年秋に廃止すると断言した。なりゆき主義の波に乗った強気である。

統一教会、細田衆議院議長の問題については雲散霧消した。

少子化対策の現金給付計画や防衛力増強の資金をどこから捻出するかについては年末の議論になる。そのときは、少しは白熱した語論になるだろう。

いや、ならないかもしれない。世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ報告書」によると、日本における平等は世界125位で、前年の116位からさらに後退した。政治も経済活動も市民社会も、なりゆきまかせのぬるま湯の中で昼寝しているような国柄なので、「防衛力増強も少子化対策も待ったなしの課題であり、資金のめどがつかなければ、またまた国債」という呪文で落着するなりゆきになるのであろう。

(2023.6.21 花崎泰雄)

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