週刊誌の報道をきっかけに、神田憲次財務副大臣が、自らが代表取締役をつとめる会社が税金の滞納を理由に、4度にわたって差し押さえを受けていたことを明らかにした。
野党は神田氏に財務副大臣辞任を要求している。メディアも「税理士でもある国会議員が税金の滞納を繰り返し、しかも徴税を担う財務省の副大臣だというのだから、開いた口がふさがらない」(朝日新聞社説)といった論調だ。
ところで「税理士でもある国会議員が税金の滞納を繰り返し」という記述は正確さに欠けるところがある。正確には、税金の滞納を繰り返した税理士の資格も持つ会社経営者が、国会議員であり、副大臣をつとめているということであり、彼の国会議員の立場と、会社経営者としての税金滞納の繰り返しの関連については、それがあるのかどうかまだ説明されていない。
今から20年ほどまえ、大勢の国会議員の年金保険料の未納が明らかになり、ジャーナリズムの格好のネタになったことがある。高齢化社会における福祉の根幹にかかわる未納だが、大山鳴動ネズミ一匹に終わった。国会はこのようなメンタリティーを持った人々が集うところなのだ。
私が子どものころは「井戸塀」という言葉がまだ生きていた。政治に入れあげて、ふと我に返ると、先祖代々の屋敷を失い、井戸と塀しか残っていなかった――そういう地方名家の子孫の政治ごっこに対する、世間のあざけりと当人の自嘲が込められた言葉だった。
いまでは政治家稼業は、この国では、子々孫々に引き継がれる実入りの良い稼業になっている。国会はそれほどまでにうまみのある就業先になった。それを可能にしているのが選挙の三ばん(地盤、看板、鞄)という政治資本の相続である。
(2023.11.11 花崎泰雄)