いつもと違う賑やかな仏前。
回り灯篭の炎に照らされた家族の中に、
兄の姿はなかった。
兄の初盆だった。
亡くなって三か月余りで
迎えたお盆。
先祖の霊を迎えるお盆で、
跡取り息子の兄は
いつも読経の先達を務めていた。
その兄の声も笑顔も、
もう見られなかった。
建設現場で高所から落ちた兄。
ブリキ職人だった父は、
即死で血まみれになった兄を抱き
呆然と立ち尽くしていたという。
葬儀が終わり
しばらく経つまで
父は涙を見せなかった。
私がやるというのを遮り、
読経の先達を務める父。
淡々とお経を唱える
気丈な親父の背中に見入った。
そして気づいた。
そこにある憔悴したものに。
父が受けた衝撃と後悔の思いは、
少しも癒されてはいなかったのだ。
思わず
その背中に頭を下げていた。
「悪かったのう。
わしが傍におってからに……!。
あっちでゆっくりせいや」
送り火を炊きながら
呟く父の背中が
えらく縮んで見えたのを
、盆を迎える度に思い出す。
回り灯篭の炎に照らされた家族の中に、
兄の姿はなかった。
兄の初盆だった。
亡くなって三か月余りで
迎えたお盆。
先祖の霊を迎えるお盆で、
跡取り息子の兄は
いつも読経の先達を務めていた。
その兄の声も笑顔も、
もう見られなかった。
建設現場で高所から落ちた兄。
ブリキ職人だった父は、
即死で血まみれになった兄を抱き
呆然と立ち尽くしていたという。
葬儀が終わり
しばらく経つまで
父は涙を見せなかった。
私がやるというのを遮り、
読経の先達を務める父。
淡々とお経を唱える
気丈な親父の背中に見入った。
そして気づいた。
そこにある憔悴したものに。
父が受けた衝撃と後悔の思いは、
少しも癒されてはいなかったのだ。
思わず
その背中に頭を下げていた。
「悪かったのう。
わしが傍におってからに……!。
あっちでゆっくりせいや」
送り火を炊きながら
呟く父の背中が
えらく縮んで見えたのを
、盆を迎える度に思い出す。