こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

合格祝い

2015年06月18日 20時20分41秒 | 家族
 ひとつ違いの兄は高校農業科に合格すると、親は早速腕時計を買った。「どないや。ピカピカやで」と見せびらかす兄に、内心羨ましくて堪らなかったが、「そんなもん要らんわ」と無視を決め込んだ。兄との差が生まれたのを感じた。「お?もうこんな時間や」と腕を顔の前に上げ時間を確かめる兄の姿が眩しかった。
 机に無造作に置かれた兄の腕時計を見つけた。手に取って右腕左腕とシルバー色のバンドをつけたり外したりした。手首に巻かれた腕時計の重さはしびれるような感覚だった。
高校に合格すると、夢に見た腕時計を手にできた。いつも兄が見せびらかしたのと同じもの。コチコチと時を刻む文字盤に感激した。新品の腕時計を左腕につけると、それだけで、大人に一歩近づいたと晴れがましかった。
「大事にせいや。遅刻はもう出来んからな」
 ふだん寡黙な父がボソッと言った。父にしては珍しい冗談を口にした。それだけ、息子の高校合格が嬉しかったのだろう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« タロの復活 | トップ | 機先を制する子供に負けた »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

家族」カテゴリの最新記事