雪とあまり縁のない地域に
住んでいる。
珍しく降り積もると、
さあ大変。
冬タイヤの用意もないから、
車が動かせず、
通勤に困難をきたす。
あの手この手を駆使するが、
最も安全で効率いいのが、
雪中歩行だった。
しかも父親の存在が見直される
ひと時にもなった。
二年前、
雪に隠された溝や路肩などを見分けながら
娘を先導。
通学に使う最寄りの駅まで
一時間近く歩いた。
普通なら父親と一緒に歩くのが
恥ずかしい年頃の娘も、
懸命に父親の後にくっついて
歩いてくれた。
「父さんの足跡を踏んどけば、
大丈夫だから」
「うん。分かった」
久々に素直な娘との会話は
実に楽しく、
凍える寒さも気にならなかった。
「ザクザク、ザク」と、
数歩後ろの娘の歩みを耳にしながら
歩いていると
「あ~、父親をやっているんや」
と喜びが沸き上がった。
駅について
コートの雪を払ってやると
「有難う、お父さん」と来た!
雪に感謝である。