老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

時間がざざらざらと私からこぼれる

2023-06-18 12:29:52 | 沁みる砂時計

銚子岬から臨む朝の海

1963 時間がざざらざらと私からこぼれる(再掲)blog no.1273 / 2019-11-07

高見順『死の淵より』講談社文芸文庫 の94頁に
「過去の空間」がある。


『死の淵より』に邂逅したのは (自分は)32歳のときだった

「過去の空間」の最初の連に

手ですくった砂が
痩せ細った指のすきまから洩れるように
時間がざらざらと私からこぼれる
残り少ない大事な時間が


咽頭癌を患い死を宣告された
作家 高見順

夏 海辺で子どもと砂遊びに戯れたとき
砂山や砂の器など作ったことを思い出す
そのとき指のすきまから砂が洩れ落ちる
何度も何度も手で砂をすくい砂の山をつくり
次に砂山の下を掘りトンネルづくりに挑む


高見順の場合
手ですくった砂が
癌で痩せ細った指のすきまから
ざらざらとこぼれ落ちる

指のすきまから落ちゆく砂も
砂時計の砂が流れ落ちてゆくのも
残り少ない砂は時間を意味する

残り少ない大事な時間の移ろいは 
無常さを感じてしまう。

{一部書き直しました}