銚子岬から臨む朝の海
1963 時間がざざらざらと私からこぼれる(再掲)blog no.1273 / 2019-11-07
高見順『死の淵より』講談社文芸文庫 の94頁に
「過去の空間」がある。
『死の淵より』に邂逅したのは (自分は)32歳のときだった
「過去の空間」の最初の連に
手ですくった砂が
痩せ細った指のすきまから洩れるように
時間がざらざらと私からこぼれる
残り少ない大事な時間が
咽頭癌を患い死を宣告された
作家 高見順
夏 海辺で子どもと砂遊びに戯れたとき
砂山や砂の器など作ったことを思い出す
そのとき指のすきまから砂が洩れ落ちる
何度も何度も手で砂をすくい砂の山をつくり
次に砂山の下を掘りトンネルづくりに挑む
高見順の場合
手ですくった砂が
癌で痩せ細った指のすきまから
ざらざらとこぼれ落ちる
指のすきまから落ちゆく砂も
砂時計の砂が流れ落ちてゆくのも
残り少ない砂は時間を意味する
残り少ない大事な時間の移ろいは
無常さを感じてしまう。
{一部書き直しました}