子どもの頃から目が悪かったから
自分の目が見えなくなること、については
何度も何度も考えたことがある。
では、耳が聞こえなくなったら?
聞こえない、とは、どういうことなのだろう。
もし、私がこの先、音を失うことがあったとしても
私はすでに音楽を知っている。
でも、一度も音楽を聞いたことがない人にとって
音楽とは、うたとは、どんなものなのだろう。
“ろう”の写真家、齋藤陽道。20歳で補聴器を捨てカメラを持ち、「聞く」ことよりも「見る」ことを選んだ。彼にとっての写真は、自分の疑問と向き合う為の表現手段でもある。そんな彼の妻・盛山麻奈美も“ろう”の写真家である。そして彼女との間に息子を授かった。“聴者”だった。幼少期より対話の難しさや音楽教育への疑問にぶち当たり、「うた」を嫌いになってしまった彼が、自分の口からふとこぼれた子守歌をきっかけに、ある変化が訪れる。生後間もない息子の育児を通して、嫌いだった「うた」と出会うまでを切り取った記録。抱いた赤子に突然泣かれ、ふと子守歌がこぼれる、誰にでもある経験。音は「どんな色をして、どんな形をしているのだろうか?」。無意識に現れた「うた」は一体どこから来たのか。
お父さんが息子のためにうたう子守唄。
ことばも、節も、リズムも、まったくのオリジナル。
うたっているうちに、子どもはすぅーっと寝てしまう。
本当に、びっくりするくらいに。
あぁ、これはほんものの”うた”だ。
ほんとうに”うたのはじまり”の瞬間だ。
愛情に満ちて あふれている こぼれ落ちた”うた“は 震え こころを振るわせて 伝わる ひびく
私たちが”うた”だと思っているものは、本当に”うた”なんだろうか。
私がやっている”音楽”は、本当にそれでいいのだろうか。
なぜ、うたうのか。
表面を磨いて整えて、あるいは独りよがりに陶酔して
何かたいせつなことを見失ってるんじゃないだろうか。
そんなことを思いながら。
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►演奏予定
4月10日(金) 西院GATTACA
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