「ある都市の死」@サンケイホールブリーゼを観に。
原作は『戦場のピアニスト』として映画化もされた、
第二次大戦中のポーランドでナチスのユダヤ人狩りを
生き抜いたピアニスト、シュピルマンの実話。
ダンスパフォーマンスグループ s**t kingz の持田将史、小栗基裕が
若き日のシュピルマン、シュピルマンの息子クリストファー、
シュピルマンを助けたドイツ兵ホーゼンフェルトらを演じ、
ピアニスト小曽根真がほぼ即興で演奏する舞台である。
小曽根さんのインタビューが新聞に載っていて
読んだ勢いでチケットを買ってしまった。
原作も読んだ。
ダンサーとピアニストの共演だから
もっと抽象的な舞台を想像していたら、
びっくりするくらいのセリフ量で
何年何月にポーランドのどこで何が起きて
シュピルマンの置かれた状況がどう変わったか、
ほとんど原作そのままに展開されて
まずそこに圧倒されてしまった。
原作を読んでいたから日付や地名はすんなり入ってきたけれど
これはもしかしたら何も知らずに観たほうが
シュピルマンの運命について
もっとハラハラしながら観られたのかもしれない。
ピアノは物語にダンスにシンクロしながら
時にはリードしながら
不穏、恐怖、慟哭、暴力などを表現していく。
それとは対照的な、物語の終盤で演奏される
ショパンのノクターンの美しさが染み入る。
そういえば、ショパンもポーランド人で
ワルシャワの悲劇を別の時代に体験した人なのだ。
5年間の逃亡生活、もう何年も鍵盤に触れてすらいなかったシュピルマンが
それでも「私はピアニストだ」と名乗る、その誇りに胸を衝かれる。
そして、物語が終わって最後に演奏されるピアノソロ。
これは完全即興なので、毎回全然違う曲になるらしい。
それまではセリフや所作と相まっての表現だったのが、
独奏によって、一気に音の力が増して聞こえた。
終演後、演出家を交えての座談会もあった。
今現在ガザで起きていることとの
あまりにタイムリーな上演で、
演者はもちろん観客も、より深く考えさせられる作品だった。
主語を大きくするべきではないのだろうけれど、
私たちは日本に暮らしていて多くの場合に
世界の出来事について、その歴史的背景について、
あるいは日本が外側からどのように見られているかについて、
あまりにも知らなさすぎるし関心がなさすぎたのではないかと。
演者の3人が、それぞれに海外で経験したことをお話しされて、
そんなふうに思った。
ホロコーストについても
歴史の授業で習った、くらいの認識で
すでに遠い過去の歴史の一頁みたいに感じていたかもしれない。
あるいは、ホロコーストは人類史においても
あまりにも異常なことであって
そんなことはもう二度と起きないだろうと
どこかで思っていた。
でも、今ガザで起きているのは、まさにその繰返しではないのか。
本番一週間前に
しかもこんな重いテーマの舞台を観て
大丈夫かなと思ったりもしていたけれど、
やっぱり観てよかったと思う。
椿紅静月×松浪千静×豊澤住静
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►活動予定
12月19日(火) 千静のうた絵巻 vol3.-ゆきおんな@道頓堀並木座
12月27日(水) 三味線三昧@京都・天Q
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