野外でアカタテハの蛹を観察していて,「ヘェー,そうなんか」と思ったことが一つ。それは,蛹化場所が食草に限っていなくて,ときには近くの別の草木であるという点です。
食草から遠くに移動するのはまったく無駄なので,まずあり得ないでしょうが,近くで安全な場所なら「蛹化場所を選ばず」のようです。
わたしがそのことを感じたきっかけは,終齢幼虫がクズの葉をつづっているのを見たときです。それで,蛹を探す際に非食餌植物にも注意を払うように心がけることにしました。すると,どうでしょう。
クズでちゃんと蛹化している別の個体を見つけたのです。それも三つもの事例です。クズは葉が大きいので,完全につづってしまうということはむずかしいと思われますが,一つは二枚の葉を寄せて完全に筒状に巻いていました(下写真の蛹①)。
もう一つの事例では,不完全ながらラッパ状に手入れしてその奥で蛹に変身していたのです(上写真の蛹②)。
3例目は,葉をつづろうとした跡形はあるものの,途中で放棄した個体です(下写真の蛹③)。
これらを見かけた同じ日,木の葉でも見つけました。木はアカメガシワで,カラムシの脇に生えた低木でした。こんな大きな葉をつづるわけにはいきません。葉はあるがままの状態で,葉の表面の外から見えにくい位置で蛹化していました。ぶら下がる,風雨や日差しを避ける,外敵の目に触れにくい,そんな点で効果があるのでしょうか。
この発見でつながって見えてきたのは,飼育箱で飼っているときに,プラスチックに尾端をくっ付けて蛹化するのと似ている点です。人工物,自然物の違いがあるだけです。場所を選り好みしていては,一匹でも多くの子孫を残さなくてはならないという種維持の大原則から反れてしまいます。結構自然環境への適応性があるのだな感じ入ったのでした。
細かい話なのですが,これも観察の事実から見えてくるアカタテハの生態であり,昆虫の観察ポイントでもあります。