自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

11月29日の昆虫たち

2014-11-29 | 日記

11月29日(土)。曇り。最低気温8.6℃, 最高気温19.5℃。

今は,暦の上では秋から冬に移る時期にあたります。今日,ウォーキングをしていて,目にした昆虫をすこしだけ。「まだ寒さが緩いので,これだけいるのだなあ」という感想をもちました。

その1。キチョウがわたしの前を横切って飛んで行きました。なかなか元気そうでした。

その2。カブラハバチ(?)の幼虫がスイバにいました。その横に,イナゴがとまっていて,葉の上には糞が転がっていました。路上のイナゴも含めて,ぜんぶで四匹見かけました。


その3。オオイヌノフブリの花がポツリポツリと咲いていて,一つの花にモンキチョウがとまって蜜を吸っていました。そこから舞い上がるとヨメナの花に移って口吻を伸ばしました。


その4。ヨモギの葉にヨモギハムシのペアがいました。日を浴びて,翅が輝いていました。


その5。アキノノゲシの茎に,ガの幼虫が一匹。シロシタヨトウです。蛹で越冬しますから,変態を間近にしているのです。この幼虫はヨトウムシ類の一つで,多食性であり,農作物に大きな被害を及ぼす害虫として知られています。


生きものがめっきり減った近頃ですが,このようにまだ結構見かけます。

 


ノートの表紙から消えた昆虫

2014-11-29 | 随想

表紙写真が昆虫で統一されていた,S社の子ども向け学習ノートが今,話題になっているとか。人気ナンバーワンだった,つまりいちばん使われていたノートだったかと思います。

2年前に姿を消したそうで,「なぜ今になって?」と思うのですが,それはおいておきましょう。

店頭から消えていった理由というのがなかなか考えさせられるものなので,この話題にすこし立ち寄っておきます。

どういう経緯があったのかというと,教師や保護者から「気持ちが悪い」「娘が昆虫写真が嫌でノートを持てないと言っている」「授業で使うとき、表紙だと閉じることもできないので困る」といった抗議が寄せられたことに端を発しているとか。その後社内で検討を重ね,結果,「一人でも嫌だと感じる人がいるのであればやめよう」という話に落ち着いたらしいです。過敏なほど消費者思いの,丁寧な対応だなあと感じます。なにしろ,40年続けてきた主張をスパッと捨て去るに至ったわけですから。

でも,ほんとうのところはそんな簡単なものじゃないのかも,です。企業間競争というものがあって,すこしでも売る上げが減るのは困るとか,少子化の流れのなか,消費者を向こうに回すのは得策ではないといった思惑がはたらいていることは十分に考えられます。

人間の好みの問題なので,昆虫が好き・嫌い,それがあるのはしかたないこと。どんなことであれ,好みが商品の売り上げにつながるとなれば,会社が相当な検討を行うのは理解できます。


ところで,この報道ですこし気になったことが数点。

その1。好みに細かく合わせるのは困難でも,社としてこのデザインを残し,他のデザイン入りのノートを発売できなかったのか,ということ。一律同じデザインで勝負するということ自体,消費者の好みが大きく変化している今の時代,問い直さなくてはならないことです。多様な好みに対応する手を打つのが順当かと思われます。

わたしには,それはちょうどランドセルの色の多様化と重なって見えてきます。子どもの選択眼をたいせつにしようとすれば,そうした環境づくりこそ大事ではないかと思えてきます。 

花とかパンダとか犬とかの写真なら無難らしく,それらを表紙にしている会社があります。でも,その写真,わたしは好きにはなれません。色が毛羽立って見えるものがありますし,構図がひどく月並みなのです。

その2。昆虫の好き嫌いをつくった土壌をもうすこし検討すべき,ということ。女の子は虫嫌いとよくいわれますが,こよなく虫を愛ずるなでしこもいます。ひどく嫌うおのこもいます。それが現実ですから受け入れるほかありません。

性差との関係はよくわかりませんが,いずれにしても環境が子どもの志向を左右することは多分にあること。親が虫を避ける傾向があれば子もそうなりそうですし,教師氏がそうであればなおさら子どもたちは目を背けることでしょう。

ごくふつうの場合,親の立ち位置としては,虫を避けようとする子どもなら,そのこころを助長するような言動は極力控えるのがよいかと思います。子の先回りをして周りの環境を都合のよいものにしようとするのでなく,すくなくとも今の環境下でより望ましい選択ができる子に育てていく方向を失わないことです。多少は我慢しなくてはならないこと,ある程度妥協をして折り合いを付けなくてはならないこと,そんなことはこれから山ほど子どもの前に立ちはだかります。

教師もそうした点を心得て対応しなくては。他のノートを使えばいいぐらいのアドバイスをすれば済む話です。

唱歌に「手のひらを太陽に」(やなせたかし 作)があります。その中で出てくる生きものは,ミミズ,オケラ,アメンボ,トンボ,カエル,ミツバチ,スズメ,イナゴ,カゲロウ。これらは数多くの生きものの一例にすぎません。それでも,「生きている」それらと「友だちなんだ」ということばが光ります。この歌,子どもはどう感じて歌っているのか,気になってきました。きれいごとの教えほど,子どものこころに背く話はありません。 

その3。教師から「気持ち悪い」という声が上がった背景を吟味すべき,ということ。

なにが気持ち悪いのか,報道ではわかりません。この教師氏は昆虫教材を扱うとき,なにを思い,どう教えている(きた)のでしょうか。特定の教材を扱うときでなくても,小さな子どもは虫に興味・関心をもつのが至極ふつうで,日常的に学校に生きものを持ち込むのは自然なすがたなのです。そのときに,どんな表情をして,どう受けとめて,子どもの気持ちをどんなふうに共有しようとしているか,気になりました。教師氏の言動なり行動なりが子どもを昆虫から一層遠ざける要因になっていなければいいのですが。

教師も人間なので好き嫌いはあるでしょう。虫嫌いで育った子が教師になれば,当然虫を好まない教師であり続けるのはわかります。そうであっても,「気持ち悪い」で片付けてわざわざ会社に“クレーム”をつける心境はどんなものなのでしょう。想像しがたいものがあります。 

今回の話題は,子どもを含め人の好みが土の匂い,生きものの息遣いから遊離して,きれいにざあーっと流れようとしてはいないか,問題提起しているようにも感じられます。

(注)写真は本文とは関係ありません。