卵殻と幼虫を見つけてから,「これなら蛹もいるのではないか」と思いました。ヒラタアブのそれは,ハエ類と似たかたちで蛹になります。前蛹が脱皮をして蛹に移行するのでなく,幼虫が直接蛹に変化していきます。蛹そのものは二重構造になっていて,囲蛹と呼ばれています。それで,さっそく探してみることにしたのです。
すると,なんとも簡単に一つめが目に飛び込んできました。いやはや,「ヤッホー!」という気持ちです。葉の表面に,それも目の高さぐらいのところにありました。見た瞬間,「これは,これまでにも見たことのある蛹だ」と感じました。名の同定は今のわたしにはできません。ヒラタアブたちは種類がちがっても,よく似た蛹になるなあと感じます。
ほかにないか探しました。ありました,ありました。これも目の高さ辺りです。茎をつかむような感じで付いていました。これはどうやらオオヒメヒラタアブの蛹のようです。
ルーペで観察していて,ごく小さなハチが表面に付いているのを発見。コマユバチのようです。これは寄生バチです。蛹に卵でも産み付けるのかなと思って,しばらく様子を見ていました。しかし,時に動き回るものの,産卵のしぐさは観察できませんでした。観察はできませんでしたが,そこから立ち去らないあまりの執拗さから,寄生バチにちがいないと確信できました。
寄生バチもきっちり生存していかなくてはなりません。それには宿主を見つける能力,そこに巧みに卵を産付する能力を発揮できなくてはなりません。小さくてもその能力はからだの大きさからすれば,大したものです。とはいえ,自分より遥かに大きい宿主を探し当てるのですから,そう困難ではないのかもしれません。
さて,先日採集した終齢幼虫について触れておきます。採集日,幼虫は同じ葉でまったく位置を変えませんでした。ところが,翌朝起きて確かめると,そこにいなくて蕾のすぐ下に移動して,なんと囲蛹に変化していたのです。直線距離にして10cmを動き,そのまま蛹化したことになります。
オオヒメヒラタアブは子孫を残すために,冬支度を急いでいるように見えます。この姿で越冬し,来春を迎えるのです。