自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

はみ出し話,スイカ紙のことで

2015-09-13 | 随想

夏の思い出話を一つばかり。わたしの書いたものがヒントになって,自由研究作品,あるいは研究風作品ができました。つくったのは2組(Aさん,Bさん)のご家族。つくった場所は各ご家庭。

あらかじめわたしが,制作過程を説明しておきました。そうしたうえで,自分の漉いたスイカ紙を漉き枠から取り外す実習をしていただきました。スイカ紙は繊維が少なく,非繊維質がかなり含まれているために,繊細な作業が必要になります。とくに外すときに,破れやすいのです。

実習のとき,ちょっと紙が破れました。細心の注意を払っていても起こりうる出来事だったので,挑戦する親子は納得されていました。あとは実際にやるだけ。道具はわたしがお貸しすることに。

Aさんは,ご自宅ですべてを完了。8月の終わりに,できた紙を持って来られました。2枚作って,1枚は乾燥時に日なたに置いたままにしていて,ひび割れに。「もう1枚はなんとかできました。でも,カビが……」とおっしゃいました。見ると,カビらしいものが付いていました。紙料をたくさん使い過ぎて,乾燥に手間どったとか。やはり,天気の関係が大いに影響するということです。


それでも,親子工作としては上出来だとうれしそうに話してくださいました。

Bさんは,溜め漉きまではわたしの仕事場でされました。乾燥は家庭です。結果は,「乾燥時ずっと日なたにおいていた」ということで,紙はひび割れていました。やはり,乾かすときの注意が大事だということがわかります。


ついでに,作り方を伝えておいたキュウリパピルスが部分的にできたということで,見せていただきました。輪切りにしたキュウリを重ね置いて,押し花式でパピルスにしたものです。「葉書サイズだったのが,この部分だけがうまくいきました」とおっしゃっていました。


こうして,意味のある親子共同作品が出来上がりました。教える側としては,よほど丁寧に伝えておかなくては初心者にはむずかしいのかな,と反省した次第です。 

 


サルビアの花紙!(続)

2015-09-12 | 野草紙

今季一回目のサルビア花紙はしおりの大きさで,しかも色がなんだか黒っぽいもので,もうすこしなんとかならないかと思っていました。それで,このほど二回目の試みをしました。

花は,我が家でプランター植えにしているサルビアから採取。花弁だけでなく,花を丸ごと使うことにしました。花はそんなにたくさん咲いているわけではないので,すでに地面に落ちている花も使いました。わずかな量なのですが,貴重な材料でもあります。


以前の話ですが,サルビアの花紙をつくったときはアルカリ剤として粉石けんを使用しました。近頃は粉石けんを使わず,もっぱら重曹を使用しています。その関係かもしれませんが,粉石けん使用時は花弁の赤色が残りました。前回つくった紙は黒に近いものです。アルカリ剤の成分の違い(粉石けんには数種の成分が含まれています),あるいは煮る時間の関係から,色の差が表れたのかもしれません。

それで,今回は短時間だけ,花弁の色変化を確認しながら煮ることにしました。

沸騰している湯の中に,花を入れ,そこに重曹を加えました。すると,色がどんどん変化し始めました。赤色だった花弁が見る見るうちに,紫色になりました。かすかに赤の名残りがあるかなあといった感じです。1分ほど煮て,煮熟を終了。


すぐに水で揉み洗いをしました。色は紫のままです。


これを紙料として漉き枠に流し込み,漉き上げました。薄い紙をつくりたかったので葉書よりいく分大きくしました。種が入っているので,おもしろい手触りになりそうです。


乾くにつれて,紫の色合いが薄くなっていくように思われました。出来上がった紙は,紫といわれるとそんな感じがする,赤いサルビアの花弁から漉いたといわれれば,ちょっとはそんな気がしないでもない,そんな風合いをしています。


サルビアの花は小さいのですが,割合きちんとした繊維があります。訪れる昆虫が脚をおけるだけの強度をつくり,送受粉がより確実に行われるように花のかたちを保つ役割を果たしているのでしょう。

肝心な色なのですが,やはり使ったアルカリ剤との相性としか思われません。まだサルビアは咲き続けていますので,次回,粉石けんで検証したいと思っています。 

 


トウガラシ紙!

2015-09-12 | 野草紙

トウガラシといっても,畑で栽培しているトウガラシのなかま(伏見トウガラシ,万願寺トウガラシ,鷹の爪など)各種の寄せ集め。ただ,食べ頃を過ぎて赤く熟したものばかりです。これらのごちゃ混ぜ紙づくりにチャレンジです。


ミニトマトでできるのですから,これだってできるはずです。ミニトマト紙で行った手順と同じようにしました。まず,アルカリ(炭酸水素ナトリウム)とともに煮込みます。煮ても,実の外皮は硬いので分解できません。皮と種子はそのままにしておきます。

実の中が柔らかくなった時点で,加熱を止めます。

あとは煮た実を水洗いしながら,揉みつぶしていきます。数秒間,ミキサーにかけて細かく砕いてもいいでしょう。これが紙料となります。


漉き方はこれまでのものと同じです。セルロース繊維の塊りだという感じはまるでしません。多くが非繊維質と思われますし,繊維質であっても半繊維状のものが大部分です。種子が入っていても取り除く必要はありません。


「こんなもので紙がつくれるのだろうか」。この段階ではそんなふしぎさが感じられるでしょう。でも大丈夫です。水切りを自然のままに任せ,乾かしていくうちに,紙状のシートになります。ふつうの感覚でとらえる紙といった感じはしませんが,厚みがあるものの,確かに紙のような塊りになります。せんべいのような紙とでもいってもよさそうです。


裏面は凹凸がはっきりしていますが,表面はそうでもありません。


それでもわたしは,「繊維質・非繊維質がごちゃ混ぜになっているけど,紙のなかまにはちがいないから,“トウガラシ紙!”」と呼びたいと思うのです。赤い,ごつごつした紙です。

 


ヨモギ紙

2015-09-11 | 野草紙

ヨモギで紙をつくってみましょう。ヨモギを材料にした紙づくりは初心者にぴったり。

成長して花が咲く頃になると,ヨモギのからだはずいぶんしっかりしています。背が高くなったものはとくに,茎の木質化が進んでいます。比較的背の低いものでも,手折ってみるとポキンという感じで折れます。こういう茎ははじめから紙材料の対象にせず,紙づくりに合った柔らかい部分を選び分けるようにします。

今回わたしが採集したのは,草刈りした後伸びてしばらく経ったヨモギです。茎はか細いほどに頼りない感じです。それでも,それなりにしっかりした繊維があって,からだを支えています。茎は茎でも,「成長の時期を選んで使え!」という原則に沿うことにします。


葉はそのまま使います。ヨモギの葉裏にはなかなか特徴のある繊維があります。それらは昔から“もぐさ”として利用されてきました。したがって,比較的丈夫な茎繊維と,細かな葉繊維がミックスした紙料が得られることになります。

煮るのは沸騰後1時間程度。アルカリを入れているので,ドロドロ状態になります。

それをふるいに移してきれいに水洗いします。そして簡単にミキサーにかけました。簡単というのは,時間にして10秒ぐらい。もう一度ふるいに入れ,水で洗ってあとに残ったものが紙料です。その紙料を水に溶いて,漉き枠に流し込みます。


あとは水切りをして,乾かすだけ。

こうしてヨモギ紙が完成しました。葉繊維が細かいので,手触りがつるつるした感じがします。

 


ヒガンバナ紙

2015-09-10 | 野草紙

ヒガンバナが咲き始めました。彼岸の頃,各地で一斉に咲くとはふしぎな生態の持ち主です。ヒガンバナの体内時計が,気温の変化と日照時間とを感じるのだそうです。気温の変化は地方によって著しくちがっていますので平均気温といった感じではなく,気温が高い方から低い方への相対的な変化,そして昼と夜の時間がほぼ同じ時期,そんなことにとても敏感に反応しているというわけです。

このヒガンバナは,昔から人間の生活と強く結びついてきました。ヒガンバナにちなんだ話題なら,事欠かないほどです。

しかし,これを紙にするという話はふつう耳にしないでしょう。紙を目にすることもないはず。なんでも紙にしてみるという視点で,ヒガンバナ紙づくりにチャレンジしてみましょう。結論からいえば,とても簡単です。ちょっと気遣うのは,この時期は気温が下がり,日差しが弱くなるので,湿紙が乾きにくいという点です。何日も乾かないと,カビが生えてくる場合があります。

それを念頭に,よい天気が続きそうな期間を選んで試すことにします。

ヒガンバナからは,キツネノカミソリと似た紙ができます。紙づくりの全過程をとおして,同じヒガンバナ科植物であることがよく理解できるでしょう。

花茎の根元から折って,両手で握れるぐらい集めます。それを水洗いし,容器に入る長さに折ってから容器に入れ,煮始めます。煮る時間は沸騰してから30分で十分です。もちろんアルカリ剤を入れます。


花茎はフニャッとした感じで,とても柔らかくなります。まるでうどんです。


これをふるいに入れて,蛇口で水を流しながら揉み洗いします。花茎の断面は円いのですが,それを潰してペチャンコにします。円いままのものが残っていても大丈夫。

きれいに洗ったあと取り出せたものがセルロース繊維をはじめとした,からだの構成物質です。これが紙料になります。ミキサーにかけようと思えば,それでよし,そのまま使ってもよし,です。

あとは,漉き枠に流し込むだけです。流し込んだときの厚みが大きければ乾きが悪くなります。小さいと,2,3日で乾きます。この紙を葉書に使いたいなら厚く漉くほかありませんが,乾燥は天気次第。成否はひとえに晴天が続くかどうかにかかっています。


乾燥後の紙は透明感あり,独特の表情あり,といったまことに風合いのある作品に仕上がります。


目を近づけて観察すると,繊維がどっさり。


この紙に出合える季節は,今しかありません。 

 


地中の卵

2015-09-09 | 生物

9月。畑の草引きをしているときの話題を一つ。

ちょっと手を抜いていると,草がどっさり生えてきます。そのままにしていると,2,3日で様子がガラッと変わってしまいます。それで草を丹念に引いていかなくてはと思っているのですが,あれこれすることがあって,手が回らないのが実情です。そんななか,久しぶりに草引きをしたのです。

あるタイミングで草を引き抜いたとき,地中から小さな卵のようなものが出てきました。色は真っ白。それは殻の色です。たくさんありました。これはいったい何だろうかと思い,とりあえずシャーレに入れてさらに観察してみることにしました。たぶん卵にはちがいないのですが,こういう場合は正体を見極めたいというのがわたしの好奇心です。


夜,くわしく観察することにしました。直径は1.5mm。万遍なく見ていくと,殻が割れたものがいくつかありました。その中に,渦巻きの殻を持ったものが見えました。「カタツムリだな」と直感。そう思いながら,調べていくとやっぱり別の卵でもカタツムリらしいものが見当たりました。

かすかにゆっくり動く渦巻き殻もありました。殻は透き通って見えました。目や触角はまったく見えませんが,殻の入り口から軟体が覗いている姿はカタツムリを想起させました。


翌日,どうなっているか確かめると,カタツムリの子どもがはっきり見えました。周りにある卵も殻が割れ,中には渦巻き型の殻が見えていました。

 


幼いいのちが誕生したのです。カタツムリのいのちが。こころに深く残る観察結果となりました。

 


カラスアゲハの産卵,そして孵化(1)

2015-09-08 | カラスアゲハ

9月4日(金)。しごとは休み。

アゲハの庭園で作業。午前11時30分,カラスアゲハが庭のキンカンに飛来。そして産卵行動に入った様子。「これはしめた!」とわくわくしながら,デジカメを準備。アゲハは木の周りを盛んに動きいているうちに,産卵を開始。

うんと近づいても警戒心はありません。お蔭で近くから撮影できました。葉にも枝にも産付。


クモの巣に脚を固定して糸に産卵しかけました,しかし,どうやら産み付けなかったようです。


カラスアゲハが去ったあと,卵を見て行きました。4個を確認。真っ白というより,やや黄色みを帯びている感じがします。

 

 
表面はつるつるのようでいて,意外にざらついています。

 
一枚目の写真の場面で産付された卵です。


これらの卵がどう変化するか,見守っていきましょう。 

 


モンキアゲハ,羽化に向かって(3)

2015-09-07 | モンキアゲハ

9月2日(水)。 スダチの葉で,偶然アゲハの幼虫を発見。体長25mmの終齢幼虫です。臭角は黄色。それをぬっと伸ばしました。そして強烈な臭いを発しました。辺りの葉を見ると,食欲の大きさが伝わってきます。

 


夜,飼育箱で観察・撮影中の幼虫A及びBを見ました。うちAが終齢幼虫になっていました。 卵が産付されるのを目撃してから16日ばかり経過しています。体内時計の指示にしたがってか,どうやら休んでいる様子。行儀よく折り重ねた胸脚が印象的です。脚の色はアゲハと異なり,赤味を帯びています。

 


臭角を撮りたくて,いたずら心で指を軽く触れてみました。迷惑なことはわかっているのですが,これも確かめるためなので許してもらうとして。すると,どこに隠していたのかとびっくりするほど色鮮やかな角を,ニュッと出しました。外敵を驚かす武器としてはりっぱなものです。

 


9月3日(木)。早朝見ると,個体Bはまだ4齢のまま。夜もやっぱりそのまま。指で触って臭角が出るのを観察。

 
個体Aがウンコを排泄するのを撮影。こういう風景は生きものならでは,です。わざわざ空中に頭部を突き出して静止状態とは,おもしろい姿勢をするものです。でも,ときどき見かける格好でもあります。腹部を走る黒い帯を見ると,後側の帯が背中央部で途切れ,反対側に続いています。この幼虫の大きな特徴です。一枚目の写真のアゲハでは,途切れることなく連続しています。


9月4日(金)。午後11時。個体Bはまだ終齢幼虫のまま。

 


ヒマワリの花紙!(続)

2015-09-06 | 野草紙

ヒマワリの花紙づくりの再挑戦記録です。ヒマワリの品種はいろいろありますが,昔ながらの外輪にだけ花弁が付いたタイプの品種から花弁を採取。

前回は,乾燥段階で紙が漉き枠用の台(木枠)から離れかけて失敗。これは紙料の収縮によるものです。その原因を,①紙が大きすぎた,②厚みがありすぎた,とみて対応方法を考えました。結果,葉書大サイズにして薄めに漉くことにしました。

煮るのも,前回以上に慎重にしました。花弁が少ないので,非繊維質を多めに残すために煮る時間を沸騰後10分程度にし,アルカリ剤を少量にとどめました。そのために,紙質は落ちるのは止むを得ないとして,花弁の色がかなり残ることになりました。弱い繊維を相手にする場合,こんな手法も考慮しなければなりません。


わたしの紙漉きは一貫して溜め漉き法です。紙料を流し込みました。


木枠を外しました。


乾燥は日陰で徐々に行いました。わたしの作戦がうまくいったようで,湿紙が完全に乾いて紙になっても,台から離れることはありませんでした。


剥がすときは,慎重に慎重に。


これでヒマワリの花紙が完成しました。


結論からいえるのは,数日間咲いている花,あるいは昆虫に存在を強くアピールしている花は,それなりに丈夫な構造になっているということです。この例のようにヒマワリは,虫の目にも人の目にも相当なアピール度で存在を訴え,それも数日咲き誇っています。

逆に簡単に萎んで落ちてしまう花の場合は,それを丈夫にするだけのエネルギーを費やす必要がまったくないくらしをしています。たった数時間開花して萎れてもじゅうぶんなくらしなのです。

紙をとおしてヒマワリの生き方が伝わってきます。「ほっほーっ!」と納得。

 


アゲハの庭園で見かけた交尾

2015-09-05 | ヤマトシジミ

9月。アゲハの庭園で作業中の話題を一つばかり。

プランターに植えているジャガイモの茎に,ヤマトシジミのペアがとまって交尾をしていました。この庭にはヤマトシジミがたくさんいて,吸蜜や産卵を繰り返しているので,そうめずらしい場面ではありません。それでも,せっかくの機会なので画像記録に残しておこうと思い,カメラを準備しました。

カメラはコンデジ,そして虫の目レンズを装着した一眼レフ。

がっちりと交尾をしていて,おまけにわたしの気配をちっとも意に介しているようでもなさろう。それで,安心して撮影できました。向かって左がメス。腹部が幾分か大きいという印象を受けます。

 


今度は虫の目レンズを使って。レンズとチョウとの距離は1cmです。背景には作業用の一輪車,温室,民家が見えます。蜜源である黄色の花も見えます。外敵がいて,絶対に安心できる環境でなくても,この環境でヤマトシジミが世代を繰り返しているのです。 

 


うっかりしていると見逃してしまいそうな世界の出来事なのですが,こうして改めて昆虫の世界に目を注ぐと,小さな事実が日々積み重なっていっている様子が窺えます。