●今日の一枚 128●
Tal Farlow Tal
タル・ファーロウの1956年録音盤(verve)。白人モダン・ギタリストの最高峰といわれるタルの快作だ。
どうでもいいことだが、「白人モダン・ギタリストの最高峰」という言い方が嫌いだ。似たような言葉に「白いバド・パウエル」(=クロード・ウイリアムソン)とか「女バド・パウエル」(=穐吉敏子)などというのがある。スポーツ界でも「白いペレ」(=ジーコ)などというのが思い出される。素直な褒め言葉には思われない。白いペレとはいっても、黒いジーコとは誰も言わないからだ。留保された言い回しだ。タル・ファロウの、「白人モダン・ギタリストの最高峰」という言い方に関しても、それから「白人」の語が取れたものをあまり見たことがない。
いい作品だ。ギターという楽器であくまでシングルトーンで勝負する姿が潔い。ブルージーとかリリカルとかいった修飾語が必要ない、あるいはそれを拒否するかのような、シングルトーンギターによる直球勝負である。じっくりと演奏を聴きたくなる一枚である。ギター、ピアノ、ベースというシンプルな編成も好感が持てる。過剰なものがなく、ただただモダンなギター演奏を聴くアルバムである。過剰なものといえば、奇才エディ・コスタのピアノとヴィニー・バーグのベースが妙に存在感があるということだろうか。さりげないが、この異様な存在感は一体何なのだろうか。