●今日の一枚 199●
Charlie Haden
Nocturne
チャーリー・ヘイデンの2000年録音作『ノックターン』だ。一曲目から素晴らしい演奏だ。というか、私にとってはこの① En La Orilla Del Mundo を聴くためのアルバムである、といってもよい。出だしのピアノソロに狂おしい気持ちになり、何かがこみ上げてくる。デリケートで絶妙なタッチ、リリカルが舞い落ちてくるような演奏だ。ピアニストは、ゴンザロ・ルバルカバ。こんな美しい旋律をこんなにも繊細なタッチで弾くピアニストは一体誰だ、と思ったものだ。そう、私はこのアルバムによってゴンザロを知ったのだった。このピアノソロがずっと続いて欲しい、という気持ちを裏切り、57秒からやや凡庸なベースとヴァイオリンが入ってくる、と思っていたのだが、改めて聴いてみると、これはこれでいい効果をだしているのではないかと思えるようになった。そして、1分22秒からはこれまた狂おしいサックスの音色が加わってくる。キース・ジャレットのヨーロピアンカルテットを彷彿とさせるような演奏である。
いわゆるジャズ的な演奏ではないが、心のやわらかい部分に触れるような旋律である。ゴンザロの優しいピアノの響きを聴いていると、涙が込み上げてきそうになる。美しい旋律に接すると、私は時々、音楽はなぜ永遠に続かず、終わりがあるのだろうか、などと青臭い感慨を抱いてしまうことがある。