WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

グレート・アメリカン・ソングブック

2007年09月18日 | 今日の一枚(C-D)

●今日の一枚 201●

Carmen Mcrae

The Great American Songbook

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 先週一週間、休みを返上して働いたご褒美で、今日はオフだ。早起きして朝食をつくり、妻や子どもたちを送り出して、洗濯と皿洗いを済ませ(食洗器だが)、時間をかけて最近気に入っているコーヒーを淹れた。時間がゆっくりと流れるのを感じ取ることができる。CDを再生装置のトレイにのせ、アンプのボリュームをいつもよりもあげてみる。ちょっとしたJazz喫茶ごっこだ。誰もいない家で大音響で音楽を聴くのは、考えてみればしばらくぶりだ。

 カーメン・マクレエの1971年録音作品『グレート・アメリカン・ソングブック(完全盤)』である。ジャズ喫茶ごっこには、このようなライブ録音盤がふさわしい。何より音がいい。カーメンたちがすぐそこで演奏しているようだ。カーメンのMCや観客の拍手、食器の音にいたるまで臨場感に溢れている。2枚組みのライブ盤は、今日のような時間的余裕のある日にはまったくふさわしい。音質、演奏、構成とも本当にライブ会場で聴いているかのようだ。2枚組LPも所有しているが、8曲追加され、オープニングの演奏も加えられたこの完全盤CDの方をよく聴く。盤面を変える手間が少ない分、演奏にどっぷりつかることができるからだ。LP時代にはなかったCDの楽しみ方のひとつかもしれない。

 時にスウィンギーに、そして時に情感をこめて、カーメンはリラックスしつつも、適度な緊張感をもって歌っていく。世間的評価どおりの名唱・名盤である。1971年のスウィング・ジャーナルの年間評価でエラ・フェッツジェラルドのアルバムが、カーメンのこの作品を上回ってベストヴォーカルアルバムに輝いたことに対して、かの大橋巨泉は「今のジャズ評論家は一体どうなっているのか?」と嘆いていたらしいが、巨泉さんの気持ちもわかるような気がする。カーメン自身、「このセッションは、私の音楽生活の中で最も満足のゆくものです」とかたったらしく、その意味でもカーメンの代表作のひとつといわれてしかるべきであろう。