WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ひまわり

2022年03月21日 | 今日の一枚(E-F)
◎今日の一枚 570◎
Best Of Screen 
 ~Love Theme
 ロシアによるウクライナ侵攻事件が起きてから、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが共演した映画『ひまわり』のことが時折頭をよぎっていた。好きな映画の一つだったのだ。『ひまわり』の再上映が広がっているというニュースにも接し、もう一度見たいという思いが高まった。ところがである。探してみてもnetflixにはなく、近隣のレンタル店にもなかったのだ。仕方なく通販で廉価版のDVDでも購入しようかと考えていた矢先に、この間の地震があった。
 家には被害がなかったが、私の書斎は例のごとく棚から本やCDが落ち、メチャメチャになってしまった。数日間放置して、片付けに取りかかったのは土曜日である。ところが、落下物の中から『ひまわり』のDVDを発見したのだ。昔、TVで放映されたものを録画したもののようだ。ちょっとした幸運である。
 しばらくぶりに見た『ひまわり』は新鮮だった。ストーリーは大体知っているので、ディテールに目が行ったのだ。ひまわりは現在ウクライナの国花らしいが、花言葉は《あなただけを見つめる》だ。映画のソフィア・ローレンのようだ。あの印象的なウクライナのひまわり畑の下には、ロシア兵やドイツ兵やイタリア兵が眠っているという話が出てくる。映画の最後には、一本のひまわりがアップで撮られ、そこからカメラは引いていき、広大な領域に広がる無数のひまわりが映し出される。恐らくは、最初の一本のひまわりはソフィア・ローレンとその悲しい物語の象徴なのであり、広大なひまわり畑はそのような悲しい物語が無数に存在することを表しているのだろう。陽気で明るいイメージのひまわりに悲しい物語を投影することで、その対比によって深い悲しみが静かに広がっていくのだ。

 今日の一枚は、『愛の映画音楽全曲集』である。演奏者はThe Film Symphonic Orchestra とあるが、どのようなオーケストラなのかわからない。企画物なのであろう。レコード棚にあった古いLPである。『ひまわり』のテーマが聴きたくて取り出してみた。いつ買ったのか全く記憶にない。自分で買ったことは憶えている。『ラスト・コンサート』のテーマ曲を聴きたくて買ったのだ。ロックやジャズしか聴いてこなかった自分が、ある時点で映画音楽のレコードを買っていたことはちょっとした驚きだ。
 『ひまわり』のテーマはいい曲だ。映画のいたるところに効果的に配され、強く印象に残る曲だ。映画を見た後に聴いた所為だろうか。ここ数日、耳にこびりついて離れない。


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