◎今日の一枚 447◎
Thelonious Monk
Underground
最近、たまに行くジャズ喫茶は、宮城・伊豆沼(若柳)のコロポックル(→こちら)と、岩手・陸前高田のh.イマジンである。h.イマジンについては震災の時の新聞で知った(→こちら)。その後、岩手・大船渡に再建してから何度か訪問したことがあったが(→こちら)、この大船渡の店は諸事情でわずか数年で閉店してしまった。再び陸前高田に戻るらしいとの情報は知っていたが、それがいつでどの場所かはわからず、余計なお世話ながら心配していた。2019年に陸前高田で再スタートしているらしいとの情報を聞き、初めて訪問したのは今年の春のことだった。以来、4~5回訪問しているが、私が行くときはたまたまいつも空いており、のんびりと音楽に浸る時間を楽しんでいる。今の私は、ジャズ喫茶で原則リクエストはしない。聴きたい演奏なら家で聴けばよいと考えているからだ。気に入ったものもそうでないものも含めて、マスターがかけるアルバムを、じっと座って一定時間聴かねばならないというところにジャズ喫茶の醍醐味があると思っている。そのある種の強制力の中で、いろいろな発見があったりするわけだ。
今日の一枚は、セロニアス・モンクの『アンダーグラウンド』である。1967~68年に録音されたモンク円熟期の作品だ。グラミー賞の最優秀アルバム・カヴァー賞を受賞したというジャケットは確かにユニークであり印象的なものだ。私は、一見トム・ウェイツの作品かと思ってしまった。
たいへん聴きやすいアルバムである。いつもながらに、ちょっとヘンテコで、タイミングを遅らせたように奏でられるモンクのピアノは、私にはとても好ましい。モンクの作品を聴くと、いつもそれがジャズ史的な名盤かどうかということより、私にとって好ましいかどうかということを意識させられる。何というか、癒されるのだ。その意味で、モンクの音楽は、私にとっていつでも極私的なものなのだ。チャーリー・ラウズの軽めのテナーサックスが、ほのかな哀愁を感じさせてなかなかいい。モンクのお気に入りのテナー奏者らしいが、モンクの音楽にはこのテナーはあっている気がする。
ライナーノーツの中山康樹氏の次の言葉は、首肯させられるものだ。
「深読み」と同じく「深聴き」をしようと思えば、いくらでもできる。モンクの音楽はシンプルに見えて、じつは深い。しかしぼくとしては、その深みの手前に無数に用意されている「楽しそうな扉」を次々に開けたくなってしまう。そしてそれが「セロニアス・モンクを聴く」ということだと思っている。難解な部屋にモンクを閉じ込めてはいけない。
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