◎今日の一枚 544◎
Larry Carlton
Alone / But Never Alone
入院中である。今回は廉価なkindleを購入して病室にもちこんだ。入院にはkindleはなかなかいい。病室に居ながらにして本を手に入れることができる。実際使ってみてわかったことだが、本を読むことに集中できるのだ。読書を妨げるような余計な機能が付属していないこともあるが、文字の大きさを変えることでページの字数が少なくなるところがいい。少ない字数のページを次々めくっていくことで、いつのまにか読書が進んでいく。本を所有するということから自由になれるところもいい。物欲から解放され、形のない本の内容だけを求めるようになる。入院してから、日本近代史の本を一冊、中世史の本を二冊読み、昨日は村田沙耶香『コンビニ人間』を読んだ。今日は、しばらくぶりにカート・ヴォネガットの作品を何冊か読み返そうと思い立ち、とりあえず『スローターハウス5』と『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』をダウンロードした。余裕があったら、村上春樹訳のレイモンド・チャンドラーの作品も読んでみたいなどと目論んでいる。
今日の一枚は、ラリー・カールトンの1986年作品、『アローン/バット・ネヴァー・アローン』である。自宅のレコード棚のどこかに、きっと今も眠っていることだろう。Apple musicで聴いて、身体にしみ込んできた。そんな意識はなかったのだが、相当聴き込んだのかもしれない。フレーズの一つ一つが、サウンドの細部の濃淡が、私の中で鮮やかに蘇った。335を封印し、全編アコースティック・ギターを使ったそのサウンドは、優しい、乾いた哀感に溢れている。ハードで苦しいこともあったその時代の私を癒したそのサウンドが、今、病室の私を癒してくれる。
退院したら、その秀逸なジャケットを玄関ホールに飾ろうかと考えた。
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