WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

エヴァンスとゲッツの共演

2020年12月06日 | 今日の一枚(A-B)
◎今日の一枚 442◎
Bill Evans Trio featuring Stan Getz
 But Beautiful 
 こんなCDがあったのですね。Bill Evans Trio featuring Stan Getz の But Beautiful である。1974年のオランダ,ベルギーでのライブ録音盤らしい。出たのは1996年とのこと。知らなかった。ビル・エヴァンスとスタン・ゲッツの共演アルバムは1964年のライブ盤(今日の一枚344)のみと思っていたのだが、こんなアルバムが出ていたのですね。
 1964年のライブ盤も私は嫌いではないのだが、エルヴィン・ジョーンズのドラムスがややワイルドすぎる印象で、ピアノはビル・エヴァンスでなくてもいいんじゃないかなどと思ったりもしたものだ。どちらかというと、ゲッツ主体のアルバムのような感じがする。
 ところが、この1974年録音のアルバムはビル・エヴァンスのピアノのリリカルなところがよく出ており、ゲッツのテナーも情感たっぷりだ。何より、エヴァンスとゲッツの音がよく絡んでいる。いいアルバムだ。とてもいい。2週間ほど前に手に入れて以来、随分聴いている気がする。エヴァンストリオは、エディ・ゴメス(b)、マーティ・モレル(ds)である。
 ところで、このアルバムを知ったのはビル・エヴァンスの伝記映画 Time Remembered を見たのがきっかけだ。劇場公開を見逃し後悔していたこの映画だったが、DVDを手に入れ視聴することができた。感激である。「時間をかけた自殺」とも評されるエヴァンスの生涯を描いたこのドキュメンタリー映画については,いつか改めて記すことになろうが、その中で挿入された  The Peacocks の、その静謐さを湛えたサウンドに耳が釘付けにされた。ホーンはまるでゲッツ、そんな演奏があるのかと思っていたら、最後のクレジットでゲッツの名前がでてきた。心はドキドキワクワク、尋常ならざる興奮を覚えた。還暦を数年後に控え、しばらくぶりに心のときめきを覚えた瞬間だった。こういうことがあるから、ジャズはやめられない。
 今も、私の書斎ではこのアルバムが鳴り響いている。⑦The Peacocks が始まった。いい。卒倒しそうだ。