ＮＨＫスペシャル 「北朝鮮帰国船」を見る

昨日夜１０時にＮＨＫスペシャル「北朝鮮帰国船」を見ました。
たまたま見た番組を今思い出して書いていますので曖昧な部分はお許しを願います。

とある空港から初老の男が出てくる。朝鮮人キムチュンガン氏と呼ぶ。どうやって入国出来たのであろうか？　脱北者として北京から来たか？　判らない。

キム氏は生まれた土地（大阪周辺？）を訪ね、（５０年ぶり？）すっかり建物も道路も変わった辺りを歩き回る。なんと当時隣に住んでいた小母さんにめぐり合えた。

さてキム氏が北朝鮮に渡ったのはどうしてか？：
１９５９年１２月「在日朝鮮人の（北朝鮮への）帰国事業」が始まる。
当時在日朝鮮人の失業率は日本人の７倍で貧困に喘いでいたそうである。
工員であったキム氏の父親はキム氏を頭に３男１女を連れて帰国する。
ここでは何故かキム氏の母親に言及がない。朝鮮人か日本人か？　死別か生別か？
最後までわからない。

さて親子は北に渡ったものの何も無い土地で父親が工員をして細々と暮らす。
物凄い寒さ、食い物もろくに無い。日本から持ち込んだ僅かばかりの身の回り品を売り払い生活費に足すもたちまち底を尽く。父親はこの世の地獄だと呟いた。

さてＮＨＫは最近明らかになった海外の秘密資料を基に「帰国事業の側面」を語る。
曰く：金日成は「韓国に対し政治的、経済的優位に立つーー多数の同胞を受け入れる事で力強く発展している事を示す事になる」とソ連外交官に語っている。
「日本政府は帰国事業により犯罪率の高い、政治的要求の強い朝鮮人を排除し、併せて２５億ドルに上る行政費の節約になる」と米国の文章はしるす。
「帰国者はラジオ、テープレコーダーの物品、日頃の発言が朝鮮人民に好ましくない影響があるので、危険階層として厳しい監視下にある」と東ドイツの文書
「帰国者は里親と言う名の党員により組織的な監視下にある。」ハンガリーの文書

更に金日成の指示で「朝鮮総連」が在日朝鮮人に働きかける。朝鮮大学の教授陣を挙げて若い学生を洗脳しエリートを北の式典に送り込み「地上の楽園」「完全就職」「差別の無い社会」を演出する。ために在日朝鮮人による「帰国事業要求」となる。今は退職した朝鮮大学副学長が後悔の念を長々と語る。

かくして新潟港から「マンセーマンセー」の声に送られて伸べ９万３千人の朝鮮人が帰国。（爺注：この内１８００人ほどの日本人妻（夫））

父親は北への絶望と帰国した決断を自分で責め酒びたりで８年後に死んだ。
生活が苦しいともらしただけで収容所送り。キム氏の周辺でも帰国日本人が次々と消えた。
残ったキム氏の命を繋いだのは日本に残ったキム氏の祖母による仕送り品であったらしい。祖母は孫のために乏しい稼ぎを節約し仕送りを続けた。

１９７９年になり「短期訪問制度？」が認めらた北朝鮮と日本の新潟に「帰国船」が就航する。
この船がキム氏の祖母の様な人の往来にあわせ北朝鮮政府にとっての「金・人・物」の行き来する命綱となる。
北の工作員は「日本人帰国者」の命を脅しの種に金品の上納に否応無しに協力させられた。
日米の関係機関も「帰国船」が公然で秘密のルートである事を知っていた。

あれやこれや軍事施設に転用可能な高性能のＰＣも個人の荷物に混ぜて新潟から送り出していた

１９８４年帰国事業終了。　帰国船は昨年のマンギョンボン号の入港禁止まで数々の疑惑を残して続いていた。

最後にキム氏がある人を見舞う。９８歳になるキム氏の祖母である。施設で寝たきりボケが進んだ様でしたが、孫の顔を見分けて泣く。
今も多くの家族が海峡を挟んで暮らしている。
最後に第三次帰国船の出航のニュース映像が映る。

ＮＨＫらしく真実の一部を伝えたけれどだから如何なのか？　良く判らない。
北に帰った多くの人は半島南の出身の人である。韓国の棄民政策には一言も言及しなかった。　また「地上の楽園」との北のプロパガンダを大々的に宣伝した大新聞があることも北と友党関係であった社会党についても、自民党の幹部で社会党の幹部と訪朝した人物についても言及が無かった。かっての副学長の後悔の念を長々と挿入するなら別の編集もあったろうと爺は思った次第。