HIROZOU

おっさんの夜明け

因果は続く

2006-12-13 19:44:14 | メモリー
「ひろ造!何やってるのよしっかりと持ち上げなさいよ」

僕は意地の悪いナースの山下に怒鳴られた。

言われてうんこまみれのばぁさんの尻を顔をそむけながら持ち上げた

山下は手際良くばぁさんの尻を拭いた。

じぃさんの風呂入れは嫌だった。

しかし、その頃は風呂の清拭もおむつ変えもナースの仕事だった。

ちんたらサボりながら検体を届けている途中オペ室の前を通りかかったら

オペ室手伝いのYに会った

話した事は無かったが何故かYとはそりが合わなかった

Yも僕のことが虫が好かなそうだった。

Yは見た目働き者で何故あそこまで一生懸命働くんだろうと不思議に思った。

たぶんナースに命令される事に快感を覚えるんだろうと

おたく面の彼の内面を僕は客観視した

ジャニーズ系の顔でいつも怠けている僕を見るのも彼は嫌だったろう

わはは!

僕は病棟勤めだった

病棟では何日か置きに部長回診があった

若いDrを引き連れて患者を診て廻る

一群はまるで‘白い巨塔,の世界だ

皆、一様に胸を張り胸ポケットの聴診器は特権階級の証のように光っていた。

その若いDrの集団の中にT先生がいた。

患者のベッドサイドでゴミを片付けていた僕を見かけたT先生は

「にこっ」っと僕に笑いかけた

東大医学部出のこの先生は何故か僕に好意的だった

否、患者さんならずすべての人に慈悲深い笑顔を絶やさなかった

今から二十数年前、僕は職員千人を擁する大病院の下働きだった。

まだその頃の病院には徒弟制度的な物が色濃く残り

色んな職種の連中が働きながら専門の学校に通った。

衣食住から学費まで出してくれる病院も珍しくなかった。

大病院だったのでDrの開業の際に引き抜かれる同僚も多かった

嫌な奴のYもお声がかかった

同じ職種の僕には誰も声をかけてくれなかった

僕もどうにか就職したらT先生もそこへやって来た

相変わらず清廉潔白の好人物だった。

数年前、新しい国の制度が出来た。

知名度の落ちた僕の職種からの転換に僕は賭けた。

しかし、転換に失敗した僕は撤退した。

同じくこの制度に賭けていた腐れ縁のYはしがみ付いている。

本業そっちのけであちこち安い報酬の講師を引き受けている。

今度ひょんな事から僕に公の委員の内示があった

撤退したハズの制度の委員

ある職種の方々からしたら究極の目標だ

ちこっと嬉しいぞ

委員長はなんとT先生だ

現在職員300人の病院の院長先生だ

Yもまだ委員はやってないぞ

また勉強もせにゃ

コメント
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