大晦日に実家に帰省する途中、四条河原町から梅田まで阪急電車の特急に乗った。
途中、急行も止まらないちっちゃな駅に差し掛かった際にふと昔の記憶が蘇った
10代最後の2年間を暮した町、孤独と挫折感に苛まれながら暮した町
20歳からの人生は現在の暮らしに繫がっているがその町で暮らした2年間は自分の人生にとって全く空白の時間と言っていいだろう
だけれど、自分が中年以降の人生に差し掛かって来た現在、その町で暮らした日々がすごく懐かしく思えて来るのは何故だろう
梅田から高速バスに揺られて5時間半、県境の最果ての町の終点のバス停が自分の実家のあるバス停
夜の8時に着いたバス停で降りるのはバスの乗客最後の僕一人
浜辺に面したバス停は周りに人の気配が全く無くて暗闇にただザーザーと波が浜に打ち寄せる音がした。
バス停からなだらかな坂道を下ると小さな漁師町が現れる
大晦日の晩だというのに
ぽつりぽつりと家の灯りが漏れているが人々の暮らす生活音は全く外には聞こえて来ない
すれ違う人もいない
それ程、多くの人が消えてしまった町だ
静寂と漆黒の中を実家に向かう
つづく・・・