HIROZOU

おっさんの夜明け

夏の思い出

2016-06-15 17:42:23 | メモリー

水平線から昇った白い噴煙のような入道雲を追い出すかのように

灰色の雲があっという間に空を覆って浜辺を暗くした

天空からゴロゴロと怒ったような遠雷が鳴り

ザッーと冲から砂浜に駆け寄って来た大粒のにわか雨に打たれた

夏がもうすぐ終わろうとしていた

白浜を訪れる観光客も減って来て

住み込みのホテルのバイトの日にちも残り僅かになった

名残りの夏を一緒に白良浜に泳ぎに来ていた地元の女の子がポツリと言った

「うち来年高校出たら彼氏と大阪で一緒に住むねん、ひろ造君は大阪に帰ってどうすんの?」

「僕・・」

白浜での夏限定のホテルのバイトが終わって

バイト先で知り合った連中と特急に乗って大阪に帰った

僕以外は皆、現役の大学生だった

大阪のアパートに帰ってまた無職で孤独な生活が始まった

2
か月ほどの住み込みで貰った金はあっという間にパチンコで無くなって

また日払いの土方仕事に出る羽目になったが

土方は嫌なので倉庫番に行ったら二日でクビになった

しょうがないから金ズルの母親だまくらかして

半年ほど遊んで暮らした

二階の庇が破れたトタン屋根の文化住宅が立ち並ぶ路地奥の三畳一間のアパート

アパートの軒下にどぶ川が流れていて

部屋の窓を開けると空地の向こうに陸橋を渡る阪急電車が見えた

コメント
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