行田市民大学9期生2学年第15回講座は「見て感じて理解する日本建築」。講師はものつくり大学の岡田公彦准教授でした。市民大学はものつくり大学の御厚意でキャンパスを無料でお借りしています。その上建築や工業に関する講座も数回開かれており、ものつくり大学の先生も担当されています。郷土史だけでなく、幅広い分野での見識が広がり興味を持って講座に臨めば様々なことが学ぶことができます。
日本建築は世界的にも十分有名で、数十年周期でブームがくると言われています。日本の和の伝統は建築の分野においても世界を席巻したとも言われます。そのため日本建築に影響を受けた世界的な建築家も多数いるようです。旧帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトや静岡県の旧日向別邸を建築したブルーノ・タウトなどです。他方世界で活躍する日本の建築家も大勢います。芸術の都パリ、ルーブル美術館の新館を設計したのは日本のSANAAというユニットで、フランス人はルーブル美術館を西洋の文化的中心としてではなく、世界文化の中心としてとらえ、こうした建築に東洋の神秘日本の建築技術を取り入れたかったといいます。フランス人は見識が深く、世界的な視点を持っていると言えます。ドイツ人建築家ブルーノ・タウトは数寄屋造りで知られる桂離宮を称賛し、自然と一体化するようなわびさびといった美意識をその建築様式にみて感銘しています。一方で日光東照宮に見られるような豪華絢爛な装飾建築に対しては、偽物であるかのような評価を下しています。この辺りがドイツ人の価値観を表していているようで興味深い点です。
新国立競技場のデザイン審査委員長の安藤忠雄氏の「光の教会」はコンクリートの打ち付けのもので、当時は世界的に見てもこうした斬新な発想と建築をする人は世界的にもいなかったそうです。
埼玉県内唯一の国宝建築物妻沼の歓喜院聖天堂。中国由来の工法から、雨の多い日本において東照宮のような建築は、次第に軒を伸ばす造りとなり、装飾美が加わったとされます。
千利休が好んだ京都妙喜庵の茶室待庵。現存する最古の茶室として国宝になっています。この茶室の様子を再現するプロジェクトが今年4月六本木ヒルズで開催され、ものつくり大学が製作にあたったそうです。天下人秀吉に愛され、茶道の権威であった千利休。最後は秀吉によって切腹に追いやられる形となりましたが、利休は茶の前では天下人も茶人も等しく同じ立場を貫いたといいます。
「わび」の思想を空間化した最古の茶室を再現することで、技術面で日本文化を継承するという取り組みです。
余談ですが、日本家屋の玄関は扉としては外開きになります。諸外国では内開きです。災害の多い日本では外に逃げることを優先し、外開きになったと考えられるそうです。