皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

忍中学の名を誇れ

2019-12-10 20:40:37 | 生涯学習

 行田市立忍中学校のPTA活動の一環として第三回家庭教育セミナーが開催されました。場所は行田市水城公園にある忍公民館です。子供の中学校生活も折り返しを過ぎ、いよいよ来年は三年生。楽しい中学校生活を過ごしているようですが、将来のことについて具体的に考える時期に差し掛かっています。親としても気をもむ年頃ではありますが、目先のことにだけとらわれず、広い視野を持って学校ともかかわっていきたいと感じています。今日のセミナーの講師は外部委託ではなく、校長先生が務めてくださいました。春からの学校通信を読んできましたが、その中で忍中の校歌が先生自身がとても気に入っていらっしゃり、特に最後の句「忍中学の名を誇れ」と言えるような教育をしていきたいと書かれていました。

平日の午後ということもあり、参加者は10名と少なめですが篠田校長先生は事前準備をされて講演に臨まれていました。講演のテーマは「より良い社会を創造するために」~家庭と学校から考える~ということでした。

今では公立中学校においてもHPが開設され、学校の歴史や沿革、教育目標、学校での活動までリアルタイムで見られる時代です。昭和22年学校改革によって忍町立第一中学校として設立された忍中学校。市立制として昭和24年には行田市立第一中学校(第二が行中、第三が長中)となります。昭和60年(1985)西中学校と分かれるまで、在校生1000名を超えるマンモス校でありました(私は昭和60年4月入学)。平成9年には創立50周年を迎え、玄関前に記念のブロンズ像が建てられています。両手で何か抱えるようにして立つこの像は「自分の夢や希望」を持つことを表しているそうです。また同年この像の下にタイムカプセルが埋められて、2047年3月には開校100周年として開けられることになっているそうです。(このことを知っていた職員は校長先生だけだったそうです)

 これからの子供たちが身につけるべき力は何か。時間軸で言えば私たち大人は今を生きている。一方で子供たちは未来に生きる。30年後の社会を想像することを求められました。すぐには思いつかないものです。反対に30年前はどういう社会だったかは思いだすことができます。

時代が昭和から平成へと変わり、ポケベルやPHSが普及し始め、ソニーやPanasonic、SHARPといった家電がその技術でしのぎを削った時代。人口が減ってゆくことなどイメージできない時代でした(バブルははじけていましたが)。自分が大学生の頃です。情報化社会(IT)時代の草創期だったのでしょう。

これからはソサエティー5.0の世界を迎えるといいます。人類にとって五段階目となる新しい世界。人類の誕生から狩猟、農耕、工業、情報社会を経て、今からは高度な先進技術によってあらゆる課題が解決されていく社会になるそうです。私たちからすると情報(IT)社会はついこの間始まったばかりだと感じてしまいますが、AI(人工知能)、ビックデータといったこれまで考えられなかった技術により、社会は我々の予測を超えて進展するそうです。

 別の公演で聴いた話では、日本史で言えば律令期から平安貴族社会、武家社会、中世戦国、江戸期といった800年から1,000年くらいの時間をかけて変化してきたことが、たった数十年単位で変化してしまう時代。時間という物差しの尺度がまったく違うのでは人の本質にも影響すると聞いたことがあります。

 30年後には教科書をもって学校へ行く時代ではなくなっているでしょう。AIがなんでも解決してくれる時代。人が必要とされなくなってしまう時代。私が働く流通小売り業においても同じように、人の手を掛けない仕組みが進みつつあります。今日たまたまいったUNIQLOのレジに並んで(いやならばない)タグが通過しただけで商品を判別されてしまうことに驚いてしまいました。

では30年後に求められる力はなんなのか。人は自ら目的を持ち、その目的に応じて情報を仕分け、答えのない課題に対して他者と協力して生き抜くことが出来る存在だといいます。情報処理や唯一の答えを膨大なデータから求めるコンピューターとの違いは、意志をもって行動できることだといいます。簡潔にいえばまさに「人間力」これこそ30年先に生きる上で必要な力なのです。

その人間力を磨く基礎となるべき義務教育期間は、公立で入れば住んでいる区域で分かれる地域割りがとられています。私立全盛と叫ばれる時代の中で公立学校の強みとその役割は何なのか。それは偶然が生み出す可能性は計り知れない事です。たまたま同じ時代、同じ区域に住んだ者同士が結ばれることでしか磨かれることのできない力があるというのです。勿論私立の様に同じ目的、学力レベルの子供たちが競いあうことで生まれる力も大きいのでしょう。でも偶然出会えた奇跡の力を信じたい。そのためには他者を認め尊重する気持ち、多くの人が共同で時間を過ごすことに必要なルールやマナーを順守するしつけが重要です。

 忍中学校の体育祭は団制が敷かれ、力の限り仲間を応援し、結果にかかわらず団長はその最後に涙を流すそうです。人を応援する力はAIにはまだ備わっていないといいます。ラグビー日本代表の様子を見ればわかります。

「認め合い、高め合い、支えあう」人によって人は成長するそうです。学び続ける自分、成長し続ける自分、信頼される自分、この三つを心の中に抱き続けることができれば、人も道に外れることはないそうです。

 最後に校長先生自ら、自分の学生時代の成績や生い立ちまでお話しくださいました。

まとめに私たち保護者に対して投げかけてくださいました。「子供に夢を背負わせておいて、自分は何も背負わないのはもったいない」

30年後の未来のためにいくつになっても「自治、共同、勤勉」の校訓を忘れないでいたいと思います。

 


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