学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

バブル経済と絵画

2012-02-28 19:22:41 | その他
1989年(昭和61)、日経平均株価は38,957円44銭をつけました。いわゆるバブル経済のピークです。ちなみに今日の日経平均株価の終値は9,722円52銭ですから、1989年は単純計算で今の約4倍の値がついていたわけですね。私自身はバブル経済の恩恵を受けた世代ではなく、むしろバブル経済が崩壊して日本が長いトンネルに入ったときに就職した世代。バブル経済の話は、美術館に出入りする業者さんから夢物語のような話を聞いて知っている程度です。

さて、先日年配のとある作家さんとお話をしていたときのこと。初めは創作活動や作品についての話をしていたのですが、なんとはなしに経済の話になりました。そこで出たのがこのバブル経済の話。作家さんの話によれば、この時期は美術学校に入学を希望する若い人たちがやたら沢山いたのだとか。なぜか。とにかく絵が飛ぶように売れるからだったそうです。お金持ちになるなら、まずは画学生になれとまで言われたらしい…。とても今では考えられない話ですが、バブル経済のときにはそんなことも一部あったようです。この時期の絵画購入といえば、日本企業によるゴッホの≪ひまわり≫やルノワールの≪ムーラン・ド・ラ・ギャレット≫、ピカソの作品などが買われ、絵画は投資の対象として見られていきました。私などは有名な画家の絵画は偽物(それも本物と類似する)の可能性が無きにしも非ずなので、かなりリスクの高い投資のような気がするのですが…。逆に言えば、リスクの高い投資ができるほど、ジャパンマネーは潤っていたということでしょうか。作家さんはもうあんな時代は来ないだろうね、とつぶやいていました。

バブル経済が崩壊して、日本企業が買いあさった絵画のほとんどは世界へ飛散したようです。夏の夜の夢のごとし。それから日本の景気は今に至るまで不安定。先日も半導体メーカーのエルピーダが破たんしました。(私が小学生の時分、社会科の授業で日本の半導体メーカーは世界一だと教わった記憶があります。それが破たんするとは…)バブル経済と絵画。私にとってはずいぶん遠い過去の話のように思えました。