学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

真田信之という人

2016-11-14 21:20:46 | 読書感想
現在、NHKの大河ドラマ「真田丸」は佳境を迎えています。昨日は大坂冬の陣の真田丸を舞台にした合戦シーンがありましたね。今更ながら、書店に並んでいる真田家関係の本を読んでみたいと思い、『真田信之 父の知略に勝った決断力』(平山優著 PHP研究所 2016年)を買ってきました。

真田信之は、真田丸の主人公真田信繁(幸村)の兄。華々しい活躍をした父昌幸や信繁の名前に隠れて、これまで「ほとんど知られていない」人物だったといいます。確かにこれまで書店でも、真田信之を主として扱った本はついぞお目にかかったことがありませんでした。

信之の生涯は、若い頃は父昌幸に従って戦場を駆け抜けただけでなく、本拠の上田や沼田の整備を進めた人物でもあります。永禄9年(1566)から万治元年(1658)まで93年の長い人生を送りました。徳川将軍家でいえば、家康、秀忠、家光、家綱の4代に仕えたわけですね。

私自身、真田信之の生涯はほとんど知らなかったので、とても面白く本を読むことができました。生き残りをかけた戦国時代、真田家は小さな小さな領主であったわけで、主君武田家の滅亡、本能寺の変、小田原合戦、関ヶ原の戦い、大坂の陣、と信之の生涯は何度も危機に見舞われました。しかも、晩年には真田家の後継を巡ってのいざこざまであり…まさに波乱万丈な人生であったといえるでしょう。彼の生涯自体が、私たちに粘り強く生きることを教えてくれるようです。

本書の第8章には、信之の領内で起きた事件簿が記されています。殺人事件や印判偽造事件、御蔵破りの犯人探しなど、ちょっとした事件を扱っていて、それに対してどのように解決したかも記されています。当時の社会の一端を垣間見ることができるようなところにもふれられています。

著者の平山さんは、大河ドラマ「真田丸」の時代考証を担当されている方のひとり。真田信之の入門書として、私はオススメしたいです。