学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

岩絵具に見惚れる

2016-11-28 22:06:37 | 仕事
いま美術、ではなく民俗行事の展覧会の手伝いを仕事でさせていただいています。私は大学で民俗学の授業を受講していたものの、フィールドワークによる調査・研究はしたことがなく、いわば素人。ですから、先輩の後ろを付いていって、資料借用の手続きやパネルづくりなどの裏方の仕事をしているのです。専門の美術の仕事ならバリバリできるのに…などと嘆いてみても、周りの状況は何も変わらないし、そんなことを思う暇があるなら手を動かして少しでも今の仕事を前に進めることが大切。ああ、ずいぶん、私も達観?したものです(笑)

実は、その展覧会で岩絵具を展示することになりました。岩絵具の入ったケースの蓋を外してみると、久し振りに見る岩絵具の鮮やかな粉末!いつみても岩絵具は美しいものです。胡粉、群青、緑青、黄土、朱…ついついうっとりと眺めてしまいました(笑)

そういえば、先日、NHKで「ロスト北斎」と題した番組が放映されていました。これは関東大震災で焼失してしまった葛飾北斎の作品を、白黒写真を元にして復元を試みるという壮大なドキュメンタリー番組でした。北斎ですから、当然のことながら色彩は岩絵具が用いられています。番組では、特に紫を出すための顔料の配合について苦心する文化財修復家の姿が映し出されていました。配合する2色がどちらも主張してはダメで、うまくバランスが取れていなくてはならない。大変なご苦労であったのだと思います。番組で知ったのも何かの縁。北斎の作品の復元を依頼した、すみだ北斎美術館にもぜひ行ってみたいものです。

岩絵具を観て思いつること。美を扱う仕事に携わっていたことに心から感謝した一日でした。