学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

茨城県北芸術祭が終了

2016-11-29 20:57:45 | 展覧会感想
9月17日から開かれていて、私も何度か足を運んだ「茨城県北芸術祭」が11月20日で終了しました。ホームページによれば、65日間で75万人の来場者があったとのことで、一日1万人以上が芸術祭を訪れたことになります。ちなみに新潟県の「大地の芸術祭」(2015年)は50日間で51万人で、1日平均が1万人。規模としては「大地の芸術祭」のほうが大きい感じがしますが、来場者の数では「茨城県北芸術祭」が上回ったようです。

これはどこかの芸術祭と比較して、というわけではないのですが「茨城県北芸術祭」は1点1点の作品の質がとても高いように感じました。それは茨城県で初めての大きな芸術祭という試みによる緊張感もあったでしょうし、総合ディレクターの南條史生さんの広いネットワークや作家のセレクト(公募による作品はほとんどなく、一般公募による展示は8組)もあったのでしょう。私も繰り返し芸術祭に訪れた理由は、作品にそれぞれ魅力があったことに尽きます。茨城県北芸術祭がビエンナーレになるのか、トリエンナーレになるのか、それとも今回限りのものになるのかはわかりませんが、これだけの人数が茨城県を訪れるのですから、自治体サイドとしてはまたやりたい、という意見が多くなるのかもしれません。

ただ、近年は全国各地でこうした芸術祭が行われるようになってきて、これまでブルーオーシャンだったものが、レッドオーシャンになりつつあります。これから芸術祭を実施するにあたっては、各地の芸術祭との何らかの大きな差別化が求められてくるのでしょう。もちろん、作家があっての芸術祭ですから、作家が出品したい魅力を持つ芸術祭であることは必要不可欠です。

「茨城県北芸術祭」、一度きりであったとしても、開催したことをきっかけにして、まかれた種が花になることを願っています。「大地の芸術祭」は、すっかり地元に根付いて(いるように私にはみえる)、芸術祭のシーズンでなくとも、いつも様々な芸術活動が継続して行われています。茨城県にもそうした活動が根付くといいな、と私は思うのでした。