私にとって、美術関連の本の感想を書くというのはなかなかに難しい。というのは、それらを読む理由は、教養のため、というよりも、仕事のためであることが多く、あまり個別の感想を持たないからです。また、感想を書いて、私の浅学を改めてさらすのもどうかなあと思ったり。
佐藤道信さんの著書、『<日本美術>誕生 近代日本の「ことば」と戦略』(講談社、1996年)も感想としてはなかなか書きにくい本のひとつ。著者は「ことば」という部分に注目して、「日本美術」や「絵画」などの言葉はどのように作られてきたのか、「絵」と「画」の使い分け、そして、それらに関して、時の政府がどのように関わってきたのかを記します。
私が興味深いと感じたところは、そのあとの美術の階層に注目したところです。明治初期の日本画、洋画の作家たちには士族が多かったこと。さらに洋画に関しては、初期洋画は旧佐幕派、洋画新派の白馬会系は藩閥雄藩の出身という傾向がある。その作家がどこの藩出身であるのか、ということが美術において主流、非主流の大きな問題になっていたことがわかります。幕府はすでに瓦解したとはいえ、それぞれの立場からバチバチと火花を散らす、この時代の人たちの姿が浮かび上がってくるようです。
本の内容は専門的ですが、日本美術とは、近代美術とは何か、の根本を問い直す本として、先にご紹介した木下直之さんの『美術という見世物』(筑摩書房、1999年)と併せてぜひ読みたい一冊です。
佐藤道信さんの著書、『<日本美術>誕生 近代日本の「ことば」と戦略』(講談社、1996年)も感想としてはなかなか書きにくい本のひとつ。著者は「ことば」という部分に注目して、「日本美術」や「絵画」などの言葉はどのように作られてきたのか、「絵」と「画」の使い分け、そして、それらに関して、時の政府がどのように関わってきたのかを記します。
私が興味深いと感じたところは、そのあとの美術の階層に注目したところです。明治初期の日本画、洋画の作家たちには士族が多かったこと。さらに洋画に関しては、初期洋画は旧佐幕派、洋画新派の白馬会系は藩閥雄藩の出身という傾向がある。その作家がどこの藩出身であるのか、ということが美術において主流、非主流の大きな問題になっていたことがわかります。幕府はすでに瓦解したとはいえ、それぞれの立場からバチバチと火花を散らす、この時代の人たちの姿が浮かび上がってくるようです。
本の内容は専門的ですが、日本美術とは、近代美術とは何か、の根本を問い直す本として、先にご紹介した木下直之さんの『美術という見世物』(筑摩書房、1999年)と併せてぜひ読みたい一冊です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます