学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

お盆

2020-08-10 22:54:20 | その他
もうすぐお盆である。世の中を騒がせている新型コロナウイルスも、亡きご先祖様にとっては一向に関わりのない話であろう。いつものようにあの世から帰ってきて、いつものように戻ってゆくに違いない。

私の祖父は10年ほど前の夏に80年の生涯を終えた。祖父亡き後、古い写真がいくつか出てきて、それを叔父に頼んで見せてもらった。最も古いのは太平洋戦争の戦地で撮影されたもの、続けて帰国後に新築した家の前、そして新しく生まれた家族との記念写真など20枚はあったろうか。1つ1つ写真をめくるたびに、私の知らない祖父の過去が目の前に現れてきた。

祖父がどんな道を歩んできたのか知りたい。そこで私は親族へ聞き取りを開始し、さらに地元の町史・市史をひっくり返して、祖父の人生と街の歴史を重ね合わせた。すると、祖父の人生は大変なものだったことがわかった。幼くして母を亡くし、兄弟たち3人はみな子供のころに病死、そうして青年時代には中国大陸へ出征、無事に帰ってきたものの、戦後すぐに父を看取る。その後、米農家を継いだが、慣れない仕事のうえ、地域では水害が多くて、ずいぶん難儀したらしい。だが、新たに果物の栽培を始め、家計の収入の底上げを図る。

このコロナ禍の現状は精神にこたえる。だが、祖父はその生涯において多くの困難にあいながらも、父を通して命のバトンを私までつないでくれた。このバトンを私の代で落とすわけにはいかない。今年のお盆は帰省できないが、亡き祖父をはじめとするご先祖様への感謝の気持ちを、胸のなかに持ち続けて静かに過ごしたい。

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