学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

今の時代に求められるもの

2017-07-04 21:59:34 | 読書感想
高校時代、私は文武両道をモットーに勉強も部活もベストを尽くしたつもりではあったけれど、ちょっと後悔していることがあります。それは、その2つしかしてこなかったということ。要するに狭い世界のなかで学生生活を過ごしてきたので、世間知らずのままに卒業してしまったのです。あの時代に小さな旅にでも出ていたら、いろいろな趣味を見つけられていたら、年の離れた友人や大人と出会っていたら、などと、今さら「たられば」と考えることがあって、それらが経験できていれば、もっと深みのある人間になれたのではないかと後悔するのでした。

先日、書店で気になる本を買ってきました。『岩波メソッド 学校にはない教科書』(岩波邦明、押田あゆみ著 2015年 岩波ジュニア新書)です。初めに言っておくと、この本は読者として高校生を想定しています。ですから、大人が読むとすでにスキルを身につけていたり、経験していることなどが書かれている場合があります。けれど、それを差し引いても面白い。本の内容は、学校の授業では学べないこと、具体的にはIF力、冒険力、ロマン力、体験力など25項目が挙げられ、高校生のうちにそれらを経験しておけば、人生はずっと豊かになるだろう、というもの。この本、ビジネス書と言ってもいいのではないかと思うくらい、今の時代に求められるものについて述べられており、どうすればそれらのスキルが磨かれるかも書かれてあります。まさに高校生のときに出会いたかった!(笑)

私が気に入ったのは「1択力」。これから浅く広い知識では通用しない。どんな分野でもいいから1つ、自分の専門分野と呼べるものを持て、というもの。そのためには、専門分野の本を1冊買い、それを愛読書にして読みこなすことが勧められています。なるほど、と思ったとともに、私もそうして勉強してきました。私の愛読書と呼べるものは辻惟雄先生の『日本美術の見方』(1992年 岩波書店)。大学時代の指導教授から勧められ、今に至るまで私の愛読書。特に調査・研究で行き詰ったときに、美術史の基本へ立ち返る本として今でも重宝しています。

そういう意味では、『岩波メソッド 学校にはない教科書』はなかなか的確なところを書いた本なのではないでしょうか。また、高校生に限らず、大学生が読んでもいいと思いますし、人生の立ち位置を確認したい社会人にも適当な本となりうると思います。お勧めの1冊です。

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