語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【言葉】日本政府の交渉能力

2010年04月14日 | ミステリー・SF
 <場面:パキスタン、カイバル峠の集落>
 「午前中はチャンスを狙う。午後からは強引に出る。この考え方でいいだろう。アメリカ人の男とジャパニーズの男は、大きいから手強い。一つ間違えるとやられる、という危険が考えられるな」
 と、ザリフ・カーンはそのあたりを危惧した。
 「射殺しても・・・・?」
 そのイスマルの言葉に、金とザリフ・カーンは思わず顔を見合わせた。アメリカ人を射殺した場合、アメリカ政府がどう出てくるか、ということだった。
 「ジャパニーズは構わん。どうせあの国の政府など腰抜けで、首相も『友愛』とか空虚な言葉を弄しているお坊ちゃんだから」
 金は笑いながら言った。日本の首相など莫迦にし切っているのだ。ミャンマーでの日本人カメラマンの射殺事件など、画像が証拠として残っているにもかかわらず、及び腰の交渉に終始したことでも判った。
 「面倒だったら、ジャパニーズ・カメラマンは射殺します」

 【引用者注】
 2007年9月27日、ミャンマーのヤンゴンで、APF通信の契約ビデオジャーナリスト、長井健司(50)は、抗議デモの鎮圧を撮影中、ミャンマー軍兵士に至近距離から銃撃されて死亡した。当時の首相、福田康夫は、9月28日、制裁措置について「日本の援助は人道的な部分も多いので、いきなり制裁ではなく、他国とも相談しながらやっていかなければいけない」とだけ述べた。
 2010年4月10日、タイのバンコクで、ロイター通信日本支局のカメラマン村本博之(43)は、反政府集会を続けるタクシン元首相派と治安部隊員との衝突を撮影中、銃弾を受けて死亡した。

【出典】柘植久慶『核の闇に潜入せよ!』(実業之日本社ジョイ・ノベル、2009)
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