やつめさす
出雲
よせあつめ 縫い合わされた国
出雲
つくられた神がたり
出雲
借りものの まがいものの
出雲よ
さみしなにあわれ
ではじまる実験的な長詩『わが出雲・わが鎮魂』は、詩の「わが出雲」と自註の「わが鎮魂」の二つで構成される。
註は、ふつうは本文(詩編)に付属するものだが、この詩集の場合、本文(詩編)と同じ比重で註に力が注がれている。だから、註だけ読む、という読み方も成立する。
「やつめさす/出雲」を「わが鎮魂」は註していわく、「『出雲』の枕詞としては『八雲立つ』がよく知られているが、ここでは『古事記』にある出雲建についての歌を下敷きにしている。/『やつめさす 出雲建が 佩ける太刀 黒葛多巻き さ身しなにあれ』/『古事記』においては、この初句が『八雲立つ』である他は同じ。(中略)なお、『やつめさす出雲』は『八(弥)芽刺す出藻』から来たものとされている」うんぬん。
ところで、「わが出雲」は全13章で構成されるが、うちⅡの全編はつぎのとおり。
すでにして、大蛇の晴のような、出雲の呪いの中にぼくはある。米
子空港の滑走路は、ほおずきの幻でいっぱいだ。異国の男がずかず
かと歩いている。あの男も天から来た。緑のひげを生やしたいかめ
しい男。背広の右の袖口から突き出ている氷の棒。左の袖にかくさ
れた金属の棒。だが、いまは、そんな男に、かかずらってはおれな
いのだ。外交問題はこの次にしよう。
屋代、
安来、
舎人(とね)、
大草(さくさ)、
出雲郷(あだかい)。
米子空港は、弓ヶ浜半島の一角にある。弓ケ浜半島は、『風土記』時代には本土から離れた砂州で、「夜見の島」と呼ばれた。夜見は、黄泉に通じる。イザナギノミコト(伊弉諾尊)の妻イザナミノミコト(伊弉冉尊)が火の神を生んだ結果住むことになった黄泉の国は、ここ「夜見の島」にあった(という説がある)。
「わが出雲」の主人公は、米子空港に降り立った瞬間に地獄くだりをはじめたわけだ。
【参考】入澤康夫『わが出雲・わが鎮魂』(復刻新版 思潮社、2004)
↓クリック、プリーズ。↓

出雲
よせあつめ 縫い合わされた国
出雲
つくられた神がたり
出雲
借りものの まがいものの
出雲よ
さみしなにあわれ
ではじまる実験的な長詩『わが出雲・わが鎮魂』は、詩の「わが出雲」と自註の「わが鎮魂」の二つで構成される。
註は、ふつうは本文(詩編)に付属するものだが、この詩集の場合、本文(詩編)と同じ比重で註に力が注がれている。だから、註だけ読む、という読み方も成立する。
「やつめさす/出雲」を「わが鎮魂」は註していわく、「『出雲』の枕詞としては『八雲立つ』がよく知られているが、ここでは『古事記』にある出雲建についての歌を下敷きにしている。/『やつめさす 出雲建が 佩ける太刀 黒葛多巻き さ身しなにあれ』/『古事記』においては、この初句が『八雲立つ』である他は同じ。(中略)なお、『やつめさす出雲』は『八(弥)芽刺す出藻』から来たものとされている」うんぬん。
ところで、「わが出雲」は全13章で構成されるが、うちⅡの全編はつぎのとおり。
すでにして、大蛇の晴のような、出雲の呪いの中にぼくはある。米
子空港の滑走路は、ほおずきの幻でいっぱいだ。異国の男がずかず
かと歩いている。あの男も天から来た。緑のひげを生やしたいかめ
しい男。背広の右の袖口から突き出ている氷の棒。左の袖にかくさ
れた金属の棒。だが、いまは、そんな男に、かかずらってはおれな
いのだ。外交問題はこの次にしよう。
屋代、
安来、
舎人(とね)、
大草(さくさ)、
出雲郷(あだかい)。
米子空港は、弓ヶ浜半島の一角にある。弓ケ浜半島は、『風土記』時代には本土から離れた砂州で、「夜見の島」と呼ばれた。夜見は、黄泉に通じる。イザナギノミコト(伊弉諾尊)の妻イザナミノミコト(伊弉冉尊)が火の神を生んだ結果住むことになった黄泉の国は、ここ「夜見の島」にあった(という説がある)。
「わが出雲」の主人公は、米子空港に降り立った瞬間に地獄くだりをはじめたわけだ。
【参考】入澤康夫『わが出雲・わが鎮魂』(復刻新版 思潮社、2004)
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