復興増税法が11月30日に成立した。関連法で、償還完了期間を25年とする「復興債」の発行を定めた。2011年度第3次補正予算(総額12.1兆円)の執行が可能になる。
所得税は、2.1%増額(2013年1月~25年間)。法人税は、実効税率(国税+地方税)をいったん5%下げたうえで、2012年4月から3年に限って税率を約2.4%引き上げる。地方税は、個人住民税の均等割を年1,000円増額(2014年6月~10年間)【注1】。
法人税実行効率を40%-5%=35%にしたうえで(向こう3年間)2.4%引き上げるとは、35%×1.024=35.84%にする、ということだ。つまり、40%-35.84%=4.16%の減税だ。
「向こう3年間」を度外視し、法人税減税(30%→25.5%、法人税実行効率40%→35%)を取りやめれば、向こう10年間でおよそ12兆円の復興財源が生まれる。所得税付加税は必要ない。
大震災後、巨額の復興資金が必要な状況を踏まえれば、政府は法人税減税を中止すべきであった。
そもそも、法人税率引き下げの論拠は、次のような政府の思い込みによる。
(1)日本の法人実効税率が「先進国の中で米国と並んで最も高い水準にある」(2011年税制改正大綱)。
(2)国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進→雇用と国内投資を拡大→日本経済を本格的な成長軌道に乗せていく・・・・のが「喫緊の政策課題」で、これに法人税率引き下げが有効だ。
しかし、
(1)←①先進国を大別すれば、(a)米国、(b)日本、(c)欧州諸国だ。(a)と(b)が高いなら、先進国の3分の2が高いことになる。多数派に属する日本が、なぜ3分の1の少数派(c)の側に移らなければならないか。この論は論拠になっていない。
(1)←②日米の法人実効税率はともに40%台と高いが、社会保険料の負担と合わせた負担率で見ると、日本の法人の負担率は欧州諸国に比べて低い【注2】。日本企業の税負担を欧州諸国並みに下げるなら、社会保険料負担は大幅に引き上げなければならない。
(2)←否定的なアンケートが2つある。
①法人税率引き下げで生まれた資金を何に充当するか。・・・・答の第一は「内部留保に回す」。第二は「借入金の返済に充てる」。「設備投資の増強」「研究開発投資の拡充」など国際競争力の強化に役立つと目される項目の回答順位は低い(帝国データバンク、2010年7月)。
②企業に海外移転の理由を訊いたもの。・・・・答の第一は「人件費の安さ」。第二は「消費地に近い」。第三は「製品・原材料が安い」。「税負担の軽さ」はずっと後順位だ(経産省、2010年4月)。
法人税率引き下げは、企業の国際競争力強化や外資系企業の立地促進にはほとんど役立たないのだ。
ちなみに、1997年来の「構造改革」政策は、日本経済を国内需要がまったく伸びない経済にした【注3】。
その結果、スイスの国際経営開発研究所(IMD)の「国際競争力ランキング」が下がった(1990年代初め1位→2011年26位)。すなわち、日本の立地競争力が衰えた。
日本の立地競争力を強める道は、法人実効率の引き下げではない(その効力は僅かだ)。国内需要を伸ばすことであり、そのためには賃金引き上げが必要なのだ。
【注1】記事「復興増税法が成立、所得増税は25年」(2011年12月1日3:30 日本経済新聞電子版)
【注2】財務省の調査によれば、税と社会保険料負担率は、
<例1>自動車メーカー・・・・日30.4%、仏41.8%、独38.9%。
<例2>エレクトロニクスメーカー・・・・日33.3%、仏49.2%、独38.1%。
【注3】「経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~」
以上、山家悠紀夫「野田内閣・増税案の何が問題か」(「世界」2011年12月号)に拠る。
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所得税は、2.1%増額(2013年1月~25年間)。法人税は、実効税率(国税+地方税)をいったん5%下げたうえで、2012年4月から3年に限って税率を約2.4%引き上げる。地方税は、個人住民税の均等割を年1,000円増額(2014年6月~10年間)【注1】。
法人税実行効率を40%-5%=35%にしたうえで(向こう3年間)2.4%引き上げるとは、35%×1.024=35.84%にする、ということだ。つまり、40%-35.84%=4.16%の減税だ。
「向こう3年間」を度外視し、法人税減税(30%→25.5%、法人税実行効率40%→35%)を取りやめれば、向こう10年間でおよそ12兆円の復興財源が生まれる。所得税付加税は必要ない。
大震災後、巨額の復興資金が必要な状況を踏まえれば、政府は法人税減税を中止すべきであった。
そもそも、法人税率引き下げの論拠は、次のような政府の思い込みによる。
(1)日本の法人実効税率が「先進国の中で米国と並んで最も高い水準にある」(2011年税制改正大綱)。
(2)国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進→雇用と国内投資を拡大→日本経済を本格的な成長軌道に乗せていく・・・・のが「喫緊の政策課題」で、これに法人税率引き下げが有効だ。
しかし、
(1)←①先進国を大別すれば、(a)米国、(b)日本、(c)欧州諸国だ。(a)と(b)が高いなら、先進国の3分の2が高いことになる。多数派に属する日本が、なぜ3分の1の少数派(c)の側に移らなければならないか。この論は論拠になっていない。
(1)←②日米の法人実効税率はともに40%台と高いが、社会保険料の負担と合わせた負担率で見ると、日本の法人の負担率は欧州諸国に比べて低い【注2】。日本企業の税負担を欧州諸国並みに下げるなら、社会保険料負担は大幅に引き上げなければならない。
(2)←否定的なアンケートが2つある。
①法人税率引き下げで生まれた資金を何に充当するか。・・・・答の第一は「内部留保に回す」。第二は「借入金の返済に充てる」。「設備投資の増強」「研究開発投資の拡充」など国際競争力の強化に役立つと目される項目の回答順位は低い(帝国データバンク、2010年7月)。
②企業に海外移転の理由を訊いたもの。・・・・答の第一は「人件費の安さ」。第二は「消費地に近い」。第三は「製品・原材料が安い」。「税負担の軽さ」はずっと後順位だ(経産省、2010年4月)。
法人税率引き下げは、企業の国際競争力強化や外資系企業の立地促進にはほとんど役立たないのだ。
ちなみに、1997年来の「構造改革」政策は、日本経済を国内需要がまったく伸びない経済にした【注3】。
その結果、スイスの国際経営開発研究所(IMD)の「国際競争力ランキング」が下がった(1990年代初め1位→2011年26位)。すなわち、日本の立地競争力が衰えた。
日本の立地競争力を強める道は、法人実効率の引き下げではない(その効力は僅かだ)。国内需要を伸ばすことであり、そのためには賃金引き上げが必要なのだ。
【注1】記事「復興増税法が成立、所得増税は25年」(2011年12月1日3:30 日本経済新聞電子版)
【注2】財務省の調査によれば、税と社会保険料負担率は、
<例1>自動車メーカー・・・・日30.4%、仏41.8%、独38.9%。
<例2>エレクトロニクスメーカー・・・・日33.3%、仏49.2%、独38.1%。
【注3】「経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~」
以上、山家悠紀夫「野田内閣・増税案の何が問題か」(「世界」2011年12月号)に拠る。
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