語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】被災者を骨までしゃぶる建築詐欺 ~震災ビジネスの闇~

2011年12月10日 | 震災・原発事故
●ボランティア詐欺師
 ボランティアだと思いこんで歓迎している人を喰うのだ。
 まずはボランティアらしい格好をするところから始める。ジーンズにシャツ。マスクもする。本物のボランティアがまだ来てない地域にトラックで行く。インフラがずたずたなところには行かない。行く足がないし、面倒だ。泥を掻き出し、家財道具を出す。このあたりは、ちゃんとやる。流木や石もちゃんと出して、トラックに積み込む。
 「ご苦労様、ありがとう」
 こう言われてからが商売だ。明細を出してカネを請求するのだ。そりゃ、驚くよ、ボランティアだって思っているんだから。けど、こっちはそんなことは言ってないからね。たいへんでしょうから手伝いましょう、ぐらいは言うよ。でも、無料だなんて言ってないからな。
 皆が皆ではないが、だいたいは出す。出さなかったら、積み出した土砂、石、流木をみんな庭に放り出す。驚いて腰抜かすが、知ったことじゃないよ。

●ボランティア詐欺の展開
 ボランティア詐欺師は、家の内部をしっかり見ている。床上浸水、その他。
 そして、被災者はボランティア風に近寄ってきた相手には警戒心が薄れ、内情を漏らす。
 こうした情報が、リフォーム詐欺師に伝えられるのだ。
 騙す側としては、相手にどれぐらいの余力があるか、何に注意しているかといった状況が把握できると、やりやすい。
 高齢者や一人暮らしの場合、買物を頼んだことがきっかけになって資産状況を把握されてしまったケースがある。
 耐震関係では、ボランティアで調査する、と言ってきた者が業者と提携していて、そこから被害に繋がる、というケースが出ている。
 
●改築とリフォームの詐欺
 詐欺師に一番うまみがあるのは、やや壊れた、という程度の家だ。震災でガラス窓が割れた、などの情報を得ると、このままだと屋根が崩落する、自宅の修繕が必要だ、と不安を煽り、不要な工事の契約を取り付けるのだ。
 <例>ひび割れ、塀の倒壊、水漏れ、雨漏りなど生じた。最初は、点検という形でやって来た。役所から依頼されて来た、と言う。書類は提示しない。作業服を着た数人がやってきて、地区の居住者、住所を記した紙片を載せたボードを手に、順番に点検している、と言う。外観チェックが終わった後、内部チェックしたい、と申し入れてくる。畳を上げて床下も見るのだ。「主任」の札をつけた者が、このまま放っておくといずれ屋根がダメになる、床下の土台にもひびが入っている、と説明する。写真を撮影するが、「業者が持っていった」と見せない。
 リフォーム詐欺と同じ手口なのだ。普通は見ることのできない屋根裏や床下に入りこみ、危険だ、と話す。
 このケースの場合、見積もり額は600万円だった。かたや、保険会社の査定は10数万円。
 自治体から援助が出るはずだ、半分は出ますね、と詐欺師はダメを押す。援助金は後で出るから、とりあえずはローンを組んで契約した。
 改修後、外観はひび割れは消えた。問題は見えないところだ。この被害者は、騙されたとわかった後で、他の業者にチェックしてもらったのだが、驚くべし、天井裏や床下などは特に何もしていなかった。持ちこんだ資材は、そのまま放置されていた。関係ないところに釘を打ったりしていただけだった。必要ない作業しか行わず、外壁のみ応急処置がしてあっただけだ。応急処置では意味がない。
 援助金は、最初に確認すべきところをやっていない。後で役所に行くと、そういう話は知らない、とのこと。業者に連絡すると、のらりくらり。我々はそう聞いたが、だからといってこちらが処理すべきことではない、契約書にはそんなことは書いてない、云々。
 ローンを組んだ会社にも連絡したが、それはおたくと業者との問題であって、こちらはカネを融資しただけだ。
 援助金は、ローンを組ませるための釣り餌だったのだ。

●詐欺の内幕
 詐欺する会社に中途採用された兵隊は語る。
 採用後、1週間ぐらい研修を受けた。建築の基本的なことを教えるという話だったが、実際には専門用語を使うこと、チェックした後はできるだけ大げさに言え、と教えられた。このあたりからヤバイと感じ始めた。
 現場には、ベテランの下に自分と同じ素人が2人、デジカメ、メジャー、水平器などそれらしい機器を持って出かけた。被災地周辺に移動する前に、すでに下調べはできていた。住所、住民の情報一覧が作成され、高齢者、女性だけの家が多い。役所が積極的に動いているかどうかもチェック済みだ。
 先乗りと称する幹部社員が役所を訪れ、地元住民のふりをして聞き出しておいたのだ。いつになったら家を直せるか、補助はあるか、などを聞き出す。これから仕事をする地域とはちょっとずれた場所の住所を告げる。稀に役所からその地域に実際に出かけることがあるからだ。
 現場では、騙しは次のように始まる。
 ベテラン社員が、役所からの依頼のような雰囲気で話し出す。被害者は疑わない。役所名をチェックしない。詐欺師たちは、全員そろいの作業服だし、会社名も書いてある。
 デジカメ係が写真を撮っていく。多少の被害はいろいろある。基本は屋根と床下だ。ここをやらないと大きな金額にならない。外観などわかりやすいところは、こちらのペースに嵌めるためだ。
 床下に入ったら、まず、ひび割れを探す。震災がなくても、湿度の関係で多少のひび割れはあるものなのだ。それをちょっと広げて撮影するのが基本だ。ハンマーで叩いたりもする。証拠写真を撮って、それを見せる。デジカメだから、その場で見せられる上に、写真を相手に渡さないで済ませられる。
 後は、ベテランが見積もりを出すところまで持っていく。家の大きさを見れば金額を出せる。最低300万円。上は1,000万円。平均500万円。提携しているローン会社があるから、そこでローンを組ませるのが基本だ。
 忙しいから今決めないと次はどうなるかわからない、と必ずいう。直ちに決めさせるのが基本だ。
 援助金は、相手を見ながら、3分の1だったり半分だったり、話を加減する。被災とはいえ直撃ではないから収入が絶たれているわけではない。その家にずっと住まう。そこを狙う。

●耐震強化詐欺
 平時でもリフォームや改築にはトラブルが多い。
 地震災害では、「耐震強化」を名乗る新手の詐欺も生まれる。手口の基本は同じだ。チェックした上で、このままではダメだと脅す。ただし、そこに地震の話を持ちこむのだ。
 「新しい建築基準が決まったので、このままでは建築基準法違反になる」
 「ガラス窓は割れて危険が及ぶため、耐震性能にあるものに変更しなくてはならない」
 「柱などにも耐震強化が義務づけられているから、それを行う」
 ありもしない制度や法律を持ち出し、相手を追い込んでいくのだ。高齢者が対象、という点に特徴がある。高齢者を説得するには、新しい法律、制度改正が有効なのだ。時代に取り残されるんじゃないか、という意識があるせいだ。
 また、高齢者が対象になりやすいのは、歳をとるほど生に執着するからだ。
 判断力低下は、ついでみたいなものだ。
 この手の詐欺は、震災から1ヵ月以内が有効だ。震災の恐怖がまだ実感をもって感じられるし、マスコミも頻繁に報道する。
 柱や壁のような見えるところはあまりやらない。土台部分と屋根だ。屋根なら、危険だからといって素材ごと替えさせることもある。アルミサッシも。偽の合格シールはいくらでも手に入る。
 耐震基準に合致すると国から補助金がでる、というアメも用意しておく。 
 家人が帰宅してから文句言っても破棄できないよう、一方的契約破棄の場合には賠償金を請求できる、という条項を契約書に入れておく。

 以上、夏原武『震災ビジネスの闇』(宝島SUGOI 文庫、2011)に拠る。

 【参考】「【震災】原発>放射能をダシにした詐欺 ~震災ビジネスの闇~
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