語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】復興・財政再建・社会保障の財源 ~法人税減税批判ふひたたび~

2011年12月04日 | 社会
 復旧・復興対策事業に政府が予定しているのは19兆円だ。原発事故への対応等のため、必要な政府資金はこれをさらに上回るだろう。
 資金調達として、増税以外のさしあたりの方法は3つ。
 (1)政府保有金融資産の取り崩し。・・・・既に動き出している。特別会計積立金の取り崩し、保有有価証券の売却など。
 (2)新規国債の発行。・・・・既に計画されている。国内に250兆円前後の余剰資金が存在するから、20~30兆円の国債は十分に消化可能だ。
 (3)歳出の削減。・・・・軍事費(4兆8千億円)の削減に手をつけるべきだ。戦闘機の購入等に資金を使う時ではない。

 こうして調達した資金を順次税に置き換えることが望ましいが、政府の増税案が増税案になっていないことは既に見たとおりだ。順序としては、次のようにすべきだ。
 (a)法人税を減税しない。・・・・いったん決まったが、改めて戻す。
 (b)不公平税制の証券投資優遇税制(上場株式の売却益、配当への低率課税10%)を廃止。
 (c)負担能力に応じた負担の原則に基づき、所得税累進税率の引き上げ(所得税+住民税を50%→65%程度に)。
 (d)金融所得課税の強化(原則総合課税にor分離課税率30~40%に)。
 
 なお、復興資金は一時的に必要な資金だ。増税分の財源は、役目を終え次第、財政再建、社会保障拡充の財源として利用できる。
 で、その財政再建、社会保障拡充のために、いくら財源が必要か。
 政府は、2020年までに基礎的財政収支を黒字化させるところに目標を置く。この場合、必要財源はおよそ30兆円だ。
 社会保障拡充の目標を独国、仏国など大陸欧州諸国並みにすることとすると、これらの社会保障支出の対GDP比は39%だから、日本もそこまで支出を増やすなら後30兆円増やすことになる【注】。これだけ支出増があれば、年金給付額(1階分)の引き上げ、医療費の無料化(5兆円)、医療・介護等従業者の処遇の改善等が十分に可能となる。

 財政再建に30兆円、社会保障拡充に30兆円、併せて60兆円の財源が必要ということだ。うち5兆円は軍事費など無断な歳出の削減で、10兆円は景気の本格的な回復による税収増で賄うこととする。後者については、リーマンショック前(2007年度)の国の一般会計税収が51兆円、現在のそれが40兆円に落ち込んでいることを考えれば、十分に期待可能な数字だ。
 60-15=45兆円の増税が必要だが、驚くべきほどの数字ではない。日本の国民負担率(税と社会保険料の対GDP比)は39%(2011年度)で、独国52%、仏国61%などに比べ格段に低いからだ。仮に45兆円の負担増となっても、国民負担率13%の上昇、52%となって、独国とほぼ同じ、仏国よりなお低い。

 問題は、誰がどのように負担するか、だ。
 まず、(b)と(c)を徹底する。次に、法人税と所得税を増税する。
 法人税については、自・公政権下で法人税率の大幅引き下げ(37.5%→30%、1997年)等があり、企業の負担率は10%程度下がっている。引き上げ可能だったのだ。
 なお、社会保障拡充の方法論だが、最終的な財源は増税によるとして、途中段階では、(1)や(2)によって、税収増を待たずとも制度の拡充は可能だ。拡充を先に実施すべきだ。<例>年金積立金残高180兆円弱(2009年度末)を取り崩せば、年金給付額の増額は直ちに可能だ。仮に年10兆円ずつ取り崩しても10年以上は大丈夫だ。増税による財源手当は、10年間のうちに考えればいい。 

 【注】GDPを350兆円とみると39%は137兆円、現状は108兆円(2011年度)。

 以上、山家悠紀夫「野田内閣・増税案の何が問題か」(「世界」2011年12月号)に拠る。

 【参考】「【震災】法人税率引き下げより賃金引き上げ ~野田政権のヘンな減税~
     「【震災】本末転倒の「社会保障と税の一体改革」 ~野田政権のアバウトな頭脳~
     「【震災】増税するのはなぜ消費税増税なのか ~説明不足~
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