語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>破綻した核燃サイクル ~防災範囲はたった5kmの六ヶ所村~

2011年12月28日 | 震災・原発事故
●事業開始から20年以上
 六ヶ所再処理工場の建設費は、1989年の事業申請時は7,600億円、1996年の経費見直しで2倍以上の1兆8,800億円、1999年には当初の3倍以上の2兆1,400億円(現在2兆1,930億円)に膨張した。
 その間、操業延期を18回繰り返し、現在はガラス固体化製造設備のトラブルで2012年10月の運転開始も危うい。

●バックエンド対策のスケジュール
 六ヶ所再処理工場は、100年の事業だ。建設に既に20年、運転に40年、施設の解体に35年。
 工場が順調に稼働しても、使用済み燃料を32,000トンしか処理できず、発生する過半数の43,000トンは中間貯蔵にまわす計画となっている。「全量処理」は最初から絵に描いた餅だった。
 再処理計画は、これだけで終わらない。放射性廃棄物のための処理・埋設移設、使用済み燃料の中間貯蔵施設とその輸送、高レベル放射性廃棄物の最終処分場などが必要だ。これら廃棄物のための施設がすべて順調に建設・解体されるのに100年かかるのだ(予定)。高レベル放射性廃棄物は、処分後300年間管理される(予定)。
 電気事業連合会が計画した2004年現在、これらバックエンド対策施設全体で総額11兆円が見積もられ、うち六ヶ所工場は全体の7割(11兆円)を占めた。
 実際には、再処理工場さえこの計画どおりに稼働していない。高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地もない。しかも、この計算には、事故やトラブルは一切想定されていない。
 再処理と最終処分場のコストは、すでに2005年から電気料金に上乗せされ、国民が100年間にわたって(何世代も)負担する仕組みが整えられている。東京電力の場合、30~40銭/kW。核廃棄物対策とは、全てを先送りする「対策」のことだ。

●溜まりゆくプルトニウム
 六ヶ所工場と各電力会社との再処理契約量32,000トンのうち4割が東京電力、2割が関西電力、1割が九州電力で、他の電力会社はそれぞれ数%にすぎない。
 事実上、東電のための再処理工場なのだが、その東電は福島県から県内全10基の原発の廃炉を要求されている。また、柏崎刈羽原発では、刈羽村民からプルサーマルを拒否されている。東電は「脱プルトニウム」せざるを得ないのが実情だ。
 英仏の再処理工場に貯蔵されている35トンのプルトニウムの消費計画(プルサーマル)も、地元説明会における「やらせ」問題などがあって、計画どおりには進まないだろう。「もんじゅ」も含めてプルトニウム利用計画はことごとく頓挫し、再処理工場の稼働を合理化できる理由は何一つない。ちなみに、日本のプルトニウム所有量は45トンだ(10年末現在)。
 
●防災範囲はたった5km
 六ヶ所工場のプールには、収容能力ぎりぎりの3,000トン(原発30基分)の使用済み燃料が貯蔵され、さらに試験運転によって発生した高レベル放射性原液もある。
 ところが、六ヶ所工場では、現在、防災範囲は5kmしか想定されていない。
 福島第一原発事故によって、防災計画の対象が30km程度まで拡大されることは必至だ。すると、北方26kmにある東通原発の防災範囲に六ヶ所村工場がすっぽり入ってしまうのだ。
 この恐るべき現実は、六ヶ所工場の被曝評価を原発より低く見積もった安全審査がもたらしたものだ。
 放出放射能総量が年間22μSvという住民の被曝量、敷地地盤の脆弱性・・・・どれをとっても六ヶ所村再処理工場の危険性は過小評価ばかりだ。
 しかし、苛酷事故(長時間の電源喪失、高レベル放射能廃液タンク・燃料プールの冷却不能、タンクの沸騰、使用済み燃料の溶融など)のシナリオが検討されたことはない。

●最大の問題
 地元の自治体との関係だ。
 青森県は、独自に「核燃税」を六ヶ所村の核燃料サイクル4施設に課している。この税収は、県税収入の10%以上を占める。「六ヶ所再処理工場計画」の中止は、青森県の事実上の「倒産」を意味する。
 六ヶ所、大間、東通、むつの各市町村も電源三法交付金なしでは自治体経営が成り立たない。
 青森県と六ヶ所村は、再処理工場が稼働しない場合、使用済み燃料は県外に搬出する、という「覚書」と各電力会社と取り交わしている。これが地元の「六ヶ所計画」推進派の大きな武器となっている。事実上、どこの電力会社も使用済み燃料を自社サイトに持ち帰ることはできないからだ。

 以上、澤井正子「破綻した核燃サイクル 時間もカネも「想定外」の超過」(「週刊金曜日」2011年12月16日号)に拠る。
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