語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~

2016年02月08日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)高脂肪食は、脳の免疫系を担う「ミクログリア」の暴走を促し、脳機能を損なうらしい【米ジョージア医科大学の報告】。
 ミクログリアは、白血球の代わりに脳内の免疫機能を担う細胞。通常は監視役に徹しているが、神経細胞(ニューロン)に異常が生じると、ニューロンの成長因子を分泌して修復を促す。また、ニューロンが死んでしまった場合は、残骸を「掃除」する役割もある。
 ただ、ミクログリアの働きが行きすぎると、正常なニューロンまで破壊され、
   アルツハイマー型認知症
   筋萎縮性側索硬化症(ALS)
などの神経変性疾患を招いてしまう、といわれている。

 (2)研究者らは、高脂肪食とミクログリアとの関係に着目。正常な雄マウスを2群に分け、
   ①総摂取カロリーの10%が飽和脂肪酸の低脂肪食
   ②同60%の高脂肪食
をそれぞれに与えた。総摂取カロリー数は同じだが、人でいう
   ①’健康な食事
   ②’ファストフード三昧の食事
に相当する。

 (3)実験開始の4、8、12週に、
  (a)代謝機能(体重、インシュリン分泌量、血糖値など)を測定。
  (b)脳機能に関しては、次の二つを測定している。
    ①海馬(学習と記憶を司る)の機能を示す血清マーカー
    ②ミクログリアの活動量を示す炎症性物質のレベル

 (4)実験開始後12週までに、②「高脂肪食」群のマウスは肥満化し、脳内の炎症性物質の量が上昇。脳神経の接合部(シナプス)数も減少していた。
 この時点で、
  (a)肥満マウスの半数を①「低脂肪食」に切り替えて観察を続けた結果、体重が元に戻るのと並行してシナプス数の回復が認められた。回復までに2ヵ月を要したが。
  (b)②「高脂肪食」にとどまったマウスたちは太り続け、かつ、シナプスを失い続けた。

 (5)動物実験とはいえ、少々背筋が凍る話だ。
 この研究で脳機能に悪影響すると示されたのは、ラードや脂身に多い「飽和脂肪酸」。
 同じ脂肪でも、魚類に含まれる「不飽和脂肪酸」は、逆にミクログリアを鎮静する作用があるといわれている。  

□井出ゆきえ(医学ライター)「高脂肪食でシナプスが消失? 動物実験での話ですが・・・・ ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.284~」(週刊ダイヤモンド」2016年1月23日号)
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