(1)2015年11月、米国で遺伝子組換え(GM)動物食品としては初めて、成長スピードを早めた鮭が米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。
すでにパナマの養殖場に輸送されているとみられている。パナマで育てられた後、切り身となって米国市場に流れるのは、(このまま何もなければ)2017年になりそうだ。
米国で流通すれば、日本の食卓に登場するのも時間の問題となる。
(2)これまで、GM食品というと、主に作物だった。
これに魚が加わった。やがて豚、鶏なども登場する可能性がある。
GM技術もゲノム編集技術が登場するなど、幅が広がってきた。
GM食品の世界が、この鮭の登場をきっかけに大きく変わりつつあるといえる。
(3)GM鮭が実際に米国市場に出回るのか。
その帰趨を左右するのが、表示だ。
米国では、消費者団体を中心にGM食品表示を求める運動が盛り上がってきた。その結果、2016年7月1日からバーモント州においてGM食品表示が始まることになった。小さな州で成立した法律だが、全米から注目を集めてきた。なぜなら、バーモント州だけで流通している食品は少なく、影響は他の州にも拡大するからだ。加えて表示を求める消費者運動に弾みをつけるからだ。
(4)バイオ業界や食品業界は、バーモント州の表示をなきものにしようと攻撃を加えてきた。
初め、裁判を起こしたが敗訴。
ついで、国家レベルで無効にしようとする食品表示法案を連邦議会下院に提出し、2015年7月末に可決。上院に回され、その行方が注目されていたが、市民多数が議会に働きかけ、この法案は取り上げられないことになった。
そのため、業界団体の意向を受けた議員は、包括的歳出法案の中に付帯事項という形で、州政府のGM食品表示法を無効にする条項を加えた。予算と絡めたこの方法は米国独自のものだが、最終的には、この付帯条項は削除されて法案は議決された。
かくて、バーモント州におけるGM食品表示法の施行が確実になった。
さらに、包括的歳出法は、FDAに対して、GM鮭の表示を義務化することを求め、そのための指針作成に加え、表示制度ができるまでGM鮭を販売してはいけない、としている。
すでに発表されたFDAの表示指針では、GM鮭と通常の鮭は実質的に同等であり、義務表示は求めないことになっている。これでは、消費者は知ることも選ぶこともできなくなるため、今度はGM鮭の表示が焦点になっている。
(5)このように米国で盛り上がりを見せているGM食品表示運動の拡大が、スーパーなどの食品販売店に影響をもたらした。
すでに8,000を超える店が、GM鮭の不売を宣言している。不売の意思を明らかにしていないのは、ウォルマートくらいだ。
(6)さらに、食品メーカーにも影響を与えた。
(a)キャンベルスープ社・・・・GM原料を使わないことを宣言し、米国全土でGM食品表示を行うことを明らかにした。
(b)製菓会社ハーシー・・・・2015年2月に主力商品である「ミルクチョコレートバー」と「キッス」でGM原料を使わないことを宣言し、2015年末までに実行した。
大手の食品メーカーがこのような方針を出し始めたのは、GM鮭の承認に加え、バーモント州での表示制度がもたらす影響の大きさを物語っている。
□天笠啓祐「GM鮭をきっかけに盛り上がる米国の表示運動」(「週刊金曜日」2016年2月12日号)
↓クリック、プリーズ。↓
すでにパナマの養殖場に輸送されているとみられている。パナマで育てられた後、切り身となって米国市場に流れるのは、(このまま何もなければ)2017年になりそうだ。
米国で流通すれば、日本の食卓に登場するのも時間の問題となる。
(2)これまで、GM食品というと、主に作物だった。
これに魚が加わった。やがて豚、鶏なども登場する可能性がある。
GM技術もゲノム編集技術が登場するなど、幅が広がってきた。
GM食品の世界が、この鮭の登場をきっかけに大きく変わりつつあるといえる。
(3)GM鮭が実際に米国市場に出回るのか。
その帰趨を左右するのが、表示だ。
米国では、消費者団体を中心にGM食品表示を求める運動が盛り上がってきた。その結果、2016年7月1日からバーモント州においてGM食品表示が始まることになった。小さな州で成立した法律だが、全米から注目を集めてきた。なぜなら、バーモント州だけで流通している食品は少なく、影響は他の州にも拡大するからだ。加えて表示を求める消費者運動に弾みをつけるからだ。
(4)バイオ業界や食品業界は、バーモント州の表示をなきものにしようと攻撃を加えてきた。
初め、裁判を起こしたが敗訴。
ついで、国家レベルで無効にしようとする食品表示法案を連邦議会下院に提出し、2015年7月末に可決。上院に回され、その行方が注目されていたが、市民多数が議会に働きかけ、この法案は取り上げられないことになった。
そのため、業界団体の意向を受けた議員は、包括的歳出法案の中に付帯事項という形で、州政府のGM食品表示法を無効にする条項を加えた。予算と絡めたこの方法は米国独自のものだが、最終的には、この付帯条項は削除されて法案は議決された。
かくて、バーモント州におけるGM食品表示法の施行が確実になった。
さらに、包括的歳出法は、FDAに対して、GM鮭の表示を義務化することを求め、そのための指針作成に加え、表示制度ができるまでGM鮭を販売してはいけない、としている。
すでに発表されたFDAの表示指針では、GM鮭と通常の鮭は実質的に同等であり、義務表示は求めないことになっている。これでは、消費者は知ることも選ぶこともできなくなるため、今度はGM鮭の表示が焦点になっている。
(5)このように米国で盛り上がりを見せているGM食品表示運動の拡大が、スーパーなどの食品販売店に影響をもたらした。
すでに8,000を超える店が、GM鮭の不売を宣言している。不売の意思を明らかにしていないのは、ウォルマートくらいだ。
(6)さらに、食品メーカーにも影響を与えた。
(a)キャンベルスープ社・・・・GM原料を使わないことを宣言し、米国全土でGM食品表示を行うことを明らかにした。
(b)製菓会社ハーシー・・・・2015年2月に主力商品である「ミルクチョコレートバー」と「キッス」でGM原料を使わないことを宣言し、2015年末までに実行した。
大手の食品メーカーがこのような方針を出し始めたのは、GM鮭の承認に加え、バーモント州での表示制度がもたらす影響の大きさを物語っている。
□天笠啓祐「GM鮭をきっかけに盛り上がる米国の表示運動」(「週刊金曜日」2016年2月12日号)
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