(1)早野透・松田喬和『田中角栄と中曽根康弘』(毎日新聞出版)を読み、中曽根康弘と安倍晋三のあまりの隔たりに呆然となる。ともに好きな政治家ではない。しかし、中曽根には少なくとも深さがあった。〈例〉城山三郎に伊藤桂一『静かなノモンハン』をすすめられ、読後、感銘を受けた、と葉書を出している。
それに対して、安倍は百田尚樹である。軽薄すぎて批判の鉾先も鈍ってしまう。
中曽根は俳句をものする。東大法学部に入って、「六法全書ばかり見ていると人間は水分がなくなる。水分を埋めるには俳句がいい」と思って句作を始めた、と早野は『政治家の本棚』(朝日新聞出版)で語っている。
何も安倍に俳句を詠め、というのではない。しかし、あまりに薄っぺらなのである。松田によれば、中曽根は「リーダーは哲学書を愛する一方で、肥溜を担げる奴じゃなければダメだ」と言っていたというが、安倍が「肥溜を担」ぐ姿を想像できるか?
松田は冒頭に挙げた本で、中曽根が外交戦術として語学力を活用していたとし、全斗煥(チョンドウファン)・韓国大統領と会談した後、カラオケに行って、韓国語で「黄色いシャツを着た男」を歌った、と紹介している。
(2)何よりもの違いは、官房長官に対する態度だろう。むろん、中曽根の後藤田正晴【注】と、安倍の菅義偉の力量や品格の優劣もあるが、後藤田は湾岸戦争の時に、自衛隊を派遣しようとした中曽根に職を賭して抵抗し、遂にそれを諦めさせた。抵抗する後藤田も後藤田なら、最後には折れた中曽根も中曽根だ。現在から振り返るなら、共に光る。
しかし、菅は安倍のイエスマンに過ぎない。安倍が抵抗を許容しないだろうし、思想とか理念のない菅は抵抗しようとも思わないだろう。
(3)早野透と松田喬和は、中曽根と土井たか子の見応えがあった「時事放談」にも触れているが、安倍は蓮舫との対談など忌避するに違いない。
中曽根と安倍に関する結論は、松田の次の指摘になる。
<角栄も中曽根も、ある意味では自民党内の異端だったんだよ。主義や政治経歴を含めて、型破りな存在だった。だから、政治家としての幅が出る。安倍を見ていても、正統から正統を歩んでいる人は異端の経験がないだけに、幅がないなと感じるね>
要するに、“正統な”坊ちゃんだということである。
【注】
「【本】決断するペシミストの逸話 ~後藤田正晴~」
「【読書余滴】後藤田正晴回顧録(3) ~政治家の質疑応答能力~」
「【読書余滴】後藤田正晴回顧録(2) ~震災復興と危機管理~」
「【読書余滴】後藤田正晴回顧録(1) ~行政改革~」
□佐高信「中曽根康弘と安倍晋三の落差 ~新・政経外科~」(「週刊金曜日」2016年12月23日号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【佐高信】の佐藤優批判(2) ~創価学会と安保法制~」
「【佐高信】の佐藤優批判(1) ~電事連・竹中平蔵・創価学会~」
「【佐高信】脱退のススメ ~連合東京のダラ幹~」
「【佐高信】激しい創価学会批判で当選した菅義偉官房長官」
「【佐高信】舛添を支援した自公と連合東京の責任」
「【佐高信】自民党と創価学会、水と油の野合」
「【戦争】おやじ、一緒に牧野村へ帰ろう ~戦没者の遺族の声~」
「【政治】岸信介の悪さの研究」
「【読売】「不正」を隠蔽する「不適切」という表現 ~東芝・不正経理~」
「【人】安倍首相とやしきたかじん“純愛妻”の共通点 ~百田尚樹~」
「【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~」
「【政経】竹中平蔵とアベノミクス ~ブラック国家ニッポン~」
「【本】『海賊と呼ばれた男』の著者、百田尚樹の実像 ~本屋大賞~」
「【震災】世論を買い占める東電、恥ずかしい広告を出す政府~佐高信と寺島実朗の対談~」
それに対して、安倍は百田尚樹である。軽薄すぎて批判の鉾先も鈍ってしまう。
中曽根は俳句をものする。東大法学部に入って、「六法全書ばかり見ていると人間は水分がなくなる。水分を埋めるには俳句がいい」と思って句作を始めた、と早野は『政治家の本棚』(朝日新聞出版)で語っている。
何も安倍に俳句を詠め、というのではない。しかし、あまりに薄っぺらなのである。松田によれば、中曽根は「リーダーは哲学書を愛する一方で、肥溜を担げる奴じゃなければダメだ」と言っていたというが、安倍が「肥溜を担」ぐ姿を想像できるか?
松田は冒頭に挙げた本で、中曽根が外交戦術として語学力を活用していたとし、全斗煥(チョンドウファン)・韓国大統領と会談した後、カラオケに行って、韓国語で「黄色いシャツを着た男」を歌った、と紹介している。
(2)何よりもの違いは、官房長官に対する態度だろう。むろん、中曽根の後藤田正晴【注】と、安倍の菅義偉の力量や品格の優劣もあるが、後藤田は湾岸戦争の時に、自衛隊を派遣しようとした中曽根に職を賭して抵抗し、遂にそれを諦めさせた。抵抗する後藤田も後藤田なら、最後には折れた中曽根も中曽根だ。現在から振り返るなら、共に光る。
しかし、菅は安倍のイエスマンに過ぎない。安倍が抵抗を許容しないだろうし、思想とか理念のない菅は抵抗しようとも思わないだろう。
(3)早野透と松田喬和は、中曽根と土井たか子の見応えがあった「時事放談」にも触れているが、安倍は蓮舫との対談など忌避するに違いない。
中曽根と安倍に関する結論は、松田の次の指摘になる。
<角栄も中曽根も、ある意味では自民党内の異端だったんだよ。主義や政治経歴を含めて、型破りな存在だった。だから、政治家としての幅が出る。安倍を見ていても、正統から正統を歩んでいる人は異端の経験がないだけに、幅がないなと感じるね>
要するに、“正統な”坊ちゃんだということである。
【注】
「【本】決断するペシミストの逸話 ~後藤田正晴~」
「【読書余滴】後藤田正晴回顧録(3) ~政治家の質疑応答能力~」
「【読書余滴】後藤田正晴回顧録(2) ~震災復興と危機管理~」
「【読書余滴】後藤田正晴回顧録(1) ~行政改革~」
□佐高信「中曽根康弘と安倍晋三の落差 ~新・政経外科~」(「週刊金曜日」2016年12月23日号)
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【参考】
「【佐高信】の佐藤優批判(2) ~創価学会と安保法制~」
「【佐高信】の佐藤優批判(1) ~電事連・竹中平蔵・創価学会~」
「【佐高信】脱退のススメ ~連合東京のダラ幹~」
「【佐高信】激しい創価学会批判で当選した菅義偉官房長官」
「【佐高信】舛添を支援した自公と連合東京の責任」
「【佐高信】自民党と創価学会、水と油の野合」
「【戦争】おやじ、一緒に牧野村へ帰ろう ~戦没者の遺族の声~」
「【政治】岸信介の悪さの研究」
「【読売】「不正」を隠蔽する「不適切」という表現 ~東芝・不正経理~」
「【人】安倍首相とやしきたかじん“純愛妻”の共通点 ~百田尚樹~」
「【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~」
「【政経】竹中平蔵とアベノミクス ~ブラック国家ニッポン~」
「【本】『海賊と呼ばれた男』の著者、百田尚樹の実像 ~本屋大賞~」
「【震災】世論を買い占める東電、恥ずかしい広告を出す政府~佐高信と寺島実朗の対談~」