語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐高信】中曽根康弘と安倍晋三の落差

2016年12月28日 | 批評・思想
 (1)早野透・松田喬和『田中角栄と中曽根康弘』(毎日新聞出版)を読み、中曽根康弘と安倍晋三のあまりの隔たりに呆然となる。ともに好きな政治家ではない。しかし、中曽根には少なくとも深さがあった。〈例〉城山三郎に伊藤桂一『静かなノモンハン』をすすめられ、読後、感銘を受けた、と葉書を出している。
 それに対して、安倍は百田尚樹である。軽薄すぎて批判の鉾先も鈍ってしまう。
 中曽根は俳句をものする。東大法学部に入って、「六法全書ばかり見ていると人間は水分がなくなる。水分を埋めるには俳句がいい」と思って句作を始めた、と早野は『政治家の本棚』(朝日新聞出版)で語っている。
 何も安倍に俳句を詠め、というのではない。しかし、あまりに薄っぺらなのである。松田によれば、中曽根は「リーダーは哲学書を愛する一方で、肥溜を担げる奴じゃなければダメだ」と言っていたというが、安倍が「肥溜を担」ぐ姿を想像できるか?
 松田は冒頭に挙げた本で、中曽根が外交戦術として語学力を活用していたとし、全斗煥(チョンドウファン)・韓国大統領と会談した後、カラオケに行って、韓国語で「黄色いシャツを着た男」を歌った、と紹介している。

 (2)何よりもの違いは、官房長官に対する態度だろう。むろん、中曽根の後藤田正晴【注】と、安倍の菅義偉の力量や品格の優劣もあるが、後藤田は湾岸戦争の時に、自衛隊を派遣しようとした中曽根に職を賭して抵抗し、遂にそれを諦めさせた。抵抗する後藤田も後藤田なら、最後には折れた中曽根も中曽根だ。現在から振り返るなら、共に光る。
 しかし、菅は安倍のイエスマンに過ぎない。安倍が抵抗を許容しないだろうし、思想とか理念のない菅は抵抗しようとも思わないだろう。

 (3)早野透と松田喬和は、中曽根と土井たか子の見応えがあった「時事放談」にも触れているが、安倍は蓮舫との対談など忌避するに違いない。
 中曽根と安倍に関する結論は、松田の次の指摘になる。
 <角栄も中曽根も、ある意味では自民党内の異端だったんだよ。主義や政治経歴を含めて、型破りな存在だった。だから、政治家としての幅が出る。安倍を見ていても、正統から正統を歩んでいる人は異端の経験がないだけに、幅がないなと感じるね>
 要するに、“正統な”坊ちゃんだということである。 

 【注】
【本】決断するペシミストの逸話 ~後藤田正晴~
【読書余滴】後藤田正晴回顧録(3) ~政治家の質疑応答能力~
【読書余滴】後藤田正晴回顧録(2) ~震災復興と危機管理~
【読書余滴】後藤田正晴回顧録(1) ~行政改革~

□佐高信「中曽根康弘と安倍晋三の落差 ~新・政経外科~」(「週刊金曜日」2016年12月23日号)
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 【参考】
【佐高信】の佐藤優批判(2) ~創価学会と安保法制~
【佐高信】の佐藤優批判(1) ~電事連・竹中平蔵・創価学会~
【佐高信】脱退のススメ ~連合東京のダラ幹~
【佐高信】激しい創価学会批判で当選した菅義偉官房長官
【佐高信】舛添を支援した自公と連合東京の責任
【佐高信】自民党と創価学会、水と油の野合
【戦争】おやじ、一緒に牧野村へ帰ろう ~戦没者の遺族の声~
【政治】岸信介の悪さの研究
【読売】「不正」を隠蔽する「不適切」という表現 ~東芝・不正経理~
【人】安倍首相とやしきたかじん“純愛妻”の共通点 ~百田尚樹~
【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~
【政経】竹中平蔵とアベノミクス ~ブラック国家ニッポン~
【本】『海賊と呼ばれた男』の著者、百田尚樹の実像 ~本屋大賞~
【震災】世論を買い占める東電、恥ずかしい広告を出す政府~佐高信と寺島実朗の対談~





【加賀野有理】カキの長所と短所

2016年12月28日 | 医療・保健・福祉・介護
 2月ごろまでは冬ガキのおいしい季節だ。別名「海のミルク」とも呼ばれるように、とろりとした食感と濃厚な甘さが特徴である。
 栄養価も高い。ビタミンB1、B2、タウリン、亜鉛、鉄、ヨード、マンガン、マグネシウム、銅、コバルトなどを含んでいる。また、カキのタンパク質は、必須アミノ酸を含む良質のものといわれている。元気がない時などに食べるといいだろう。
 一方で、カキは食中毒を起こすこともある。原因はカキの豊富な栄養素だという。細菌が繁殖しやすいのだ。
 カキは1時間に20リットルもの海水を吸い込んでプランクトンを食べる。そのプランクトンがウイルス感染をしていたり、有毒なウイルスや細菌を含んでしまうと、そのカキを食べた人にも感染する。
 原因は、ノロウイルスによるものが多い。
 体調不良の時や疲れている時、また一度に多量のカキを食べた時などに起こりやすいというので注意したいものである。

□加賀野有理(サイエンスライター)「カキの長所と短所 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2016年12月9日)
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 【参考】
【加賀野有理】クリスマスは2週間 ~その秘密~
【加賀野有理】地図を見る ~方向オンチを治す法~
【加賀野有理】アパートの屋上で暮らすファッションモデル ~ミニマリスト~
【加賀野有理】脳の栄養 ~EPAとDHA~
【加賀野有理】今年の冬の天気、ラニーニャ現象
インフルエンザワクチン
【加賀野有理】大掃除の道具
【加賀野有理】サザンカとツバキ