語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【南雲つぐみ】揺さぶりに注意 ~赤ちゃんの脳震盪や硬膜下出血~

2017年02月12日 | 医療・保健・福祉・介護
 30年も昔、生後3ヵ月の子どもをベビーカーに寝かせて外出しようとして、近所の女性に「赤ちゃんはまだ脳ができあがっていないから、そんなものに乗せてゆすったらダメだ」と叱られた。しかし当時の育児書にも記載はなく、私は非科学的な話だと思った。
 90年代後半に「乳児揺さぶられ症候群」が話題になり、あの指摘は正しかったと知った。なぜ昔の人は知っていたのだろう。
 厚生労働省によれば首が座っていない赤ちゃんの頭は「頭蓋骨の中に脳が浮かんでいるような」状態だそうだ。それが揺さぶられると、頭蓋骨の中で脳が動くことでズレが生じ、脳を覆う硬膜に張りめぐらされた血管や神経が引きちぎれる。これが赤ちゃんの脳震盪や硬膜下出血の原因になる。
 筋力が弱ったり、血管がもろくなったりした高齢者も、同様の事故が起きるという。転んで軽く頭がぶつかった拍子に慢性硬膜下出血が起こり、何日もたってから手足のまひや意識障害などの症状に出ることもある。周囲の人も優しいケアを心掛けたいものだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「揺さぶりに注意 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年1月29日)を引用
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【中桐雅夫】High Noon

2017年02月12日 | 詩歌
 勇敢な男は立っていた
 丘のうえの高い一本の樹のように
 しっかり根をはって
 正午を待っていた
 静かだ、死が来る前の静かさだ
 時々、小川のせせらぎがきこえる
 「川というものには
 悲しさと嬉しさがまじっている」
 勇敢な男は拳銃をとった
 彼を愛している者は誰もなく
 彼が愛している者は彼から去った
 真夏の灼けつく土
 時計の音を失った時の地帯で
 ただ一人、四人の敵を待っている
 彼の心臓はぷつぷつと炎の泡を吹いた
 大海のように荒れ、また凪いだ
 火薬の匂いが軒下をはっていた
 勇敢な男の任務は終わり
 蝉が鳴いた
 あわてて教会の鐘が鳴った
 彼は急に自分の背が低くなったことに気づいた
 水道の栓をひねり
 すこしの水が喉を流れていった時
 彼は生命の流れていくのを知った

 *

  <「High Noon」(『中桐雅夫詩集』より)。この詩人には、前の二作のように形而上学的な主題を追求したやや観念性の
濃い作品の他に、直接あるいは間接的な体験に基づき、具体的な場面(シチュエーション)を設定して物語的に書かれた作品の系列がある。「High Noon」は、そうした系列の詩の中でもっとも成功したものの一つで、フレッド・ジンネマン監督の西部劇映画の名作「真昼の決闘」(原題名「High Noon」)に内容を借りている。
 --ゲイリー・クーパー扮する主人公ウィル・ケインが保安官の任期を終え、妻を迎えて町を去ろうとする日に、かつて彼が牢獄へ送った無法者とその仲間が彼を狙って町にやってくる。ウィルは既にブリキの記章を町長に返しているので町を去ってもかまわないのだが、彼の良心と正義感が彼を町にとどまらせる。花嫁の反対と町の人々の非協力とをよそに、ウィルは真昼を期して挑まれた1対4の決闘に挑み遂に4人の敵を倒す。
 これが映画「真昼の決闘」のあらすじだが、この映画を見た見ないに関係なく、この詩はこの詩として十分に味わえる。それだけの詩作品としての独立性をこの詩は持っている。第一連・第二連には、決闘の時が迫るのを待っている「勇敢な男」の心理的な緊迫感が、第三連には、敵を倒した後に男に戻ってきた日常感覚が、それぞれ鮮やかに定着されている。特にこの詩の魅力は第三連にあり、決闘が終って緊張がゆるむと同時に、蝉が啼き教会の鐘が鳴ったのに気づく、あるいは自分の背が急に低くなったように感ずるというあたり、さらに咽喉を流れる水を生命の流れていくように感ずるというところなどは、実に心にくいばかりである。【小海永二】>

□中桐雅夫「High Noon」(村野四郎・解説『現代詩集 ~日本の詩歌30~』(中央公論社、1970)
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