先日、テレビNHKBSプレミアムで、映画「花のあと」が放映される旨載っていたため、藤沢周
平の熱烈ファンとして、大変楽しみにして観賞した。
この映画「花のあと」は、藤沢周平の短編小説を基に、中西健二監督により映画化されたも
の。
藤沢作品によく登場する、いわゆる「海坂藩もの」で主人公が晩年、孫達に若き日を回想しな
がら語って聞かせる形で物語は展開する。
(あらすじ) 以登(北川景子)は、子供の頃から父・寺井甚左衛門(國村隼)に、剣の手ほどきを受けて育った女剣士でもある。 そんな以登に、桜の花の下で声を掛けたのは、羽賀道場の剣豪・江口孫四郎(宮尾俊太郎)で、これが縁で孫四郎の人柄の一端を知ることとなった。 しかし以登は、未だ孫四郎と剣を交えたことはなく、ある日父、甚左衛門に、孫四郎との手合わせを懇願し立ち合うことになった。 互いに激しく竹刀を打ち合う中、いつしか孫四郎に胸を焦がしている自分がいることに気付く。 このたった一度の手合わせで、以登は孫四郎に淡い恋心に似た感情を抱くが、以登には既に父が決めた、許婚・片桐才助(甲本雅裕)がいるため、孫四郎への想いを断ち切ろうと努める。 その数ヵ月後、藩命で江戸に向かった孫四郎が、自ら命を絶ったと父から聞かされる。 どうしても納得の出来ない以登は、許婚・才助の手を借りて、事件の真相を探って行く。 その結果、藩の重役・藤井勘解由の卑劣な罠にかかっての無念の死と知る・・・・以登は孫四郎への淡い想いと、その無念を晴らすため復讐を決意し、藤井に決闘を申し込む・・・・
この作品も、男女の恋心を軸に、一見理不尽とも思える武士道:「切腹」「忠義」という封建道
徳を扱ったものであるが、映画全編に流れる美しい映像、とりわけ光と影を効果的に演出し
た、桜花や夜の雪景色などの美しさの際立つ作品となっている。
主演の北川景子の決闘場面は、さすがに努力のあとが窺われ、迫力のあるものとなって
おり、今後の期待される女優と云うべきであろうか。
脇を固める父役(國村隼)、医者役(柄本明)などベテラン陣の重厚な演技や、市川亀次郎
の、自然な立ち居振舞いの中に、悪重役の雰囲気を醸す演技は、さすが歌舞伎界のホープと
しての光る演技である。
また許婚・才助役の甲本雅裕の、飄々とした演技が素晴らしく、こうした名脇役達が映画全体
を引き締め、なかなか見応えのある映画となっている。
~今日も良い一日を~