山桜の花が、月の光を浴びてひらひらと舞い散る、これぞ日本ならではの”和の美”で
はないだろうか。
今年も山ざくらが山に彩りを添える季節が巡り、奥山の静寂に包まれて今を盛りに咲
いている。
山桜をこよなく愛した歌人・若山牧水、彼は「旅の歌人・情熱の歌人・酒の歌人」等と評
されている。
牧水が大正10年に伊豆の湯河原温泉で詠んだとされる、『山桜の歌』の中に収録され
ている23首の中から、好きな歌を幾つか紹介したいと思います。
『山ざくら』 若山牧水
うすべにに葉はいちはやく萠えいでて咲かむとすなり山櫻花
うらうらと照れる光にけぶりあひて咲きしづもれる山ざくら花
花も葉も光りしめらひわれの上に笑みかたむける山ざくら花
瀬々走るやまめうぐひのうろくづの美しき頃の山ざくら花
山ざくら散りしくところ眞白くぞ小石かたまれる岩のくぼみに
つめたきは山ざくらの性にあるやらむながめつめたき山ざくら花
峰かけてきほひ茂れる杉山のふもとの原の山ざくら花
とほ山の峰越の雲のかがやくや峰のこなたの山ざくら花
日は雲にかげを浮かせつ山なみの曇れる峰の山ざくら花
今朝のあらしめきて溪間より吹きあぐる風に櫻散るなり
山ざくら散りのこりゐてうす色にくれなゐふふむ葉のいろぞよき
~今日も良い一日を~