JR島本駅周辺には、かつて豊かで多様な「農とみどり」がありました。新駅開業を機に周辺の自然環境が大きく失われてしまうのではないかと心配する声があるなか、島本町はJR島本駅開業事業において駅西側の土地利用方針を示していませんでした。
これは非常に正しい判断、慧眼であったと思います。なぜなら、駅の開業を機に、西側の田園は、プラットホームから四季折々に里山里地の風情を楽しめる島本町の新たなシンボルとして脚光を浴びることとなったからです。
日本の人口が減少していく時代において、都市圏への人口集中に対応しなければならなかった高度成長期時代と同様の考え方をする必要はないとわたしは思います。島本町においても、JR島本駅の西側を、駅に近いという理由で開発する必然性は極めて少ないと考えています。
以下、大阪府の都市計画のスケジュール(5年毎)を待たずに、いつでも市街化区域に編入できる「保留区域」設定に、戸田が反対する理由を述べます。
1.当該地の開発事業計画の熟度は高まっていません
町の将来を大きく左右する重要な政策決定に、住民間の熟議を欠いたまま市街化区域への編入を急ぐことになりかねないと懸念します。当該地は組合施行の土地区画整理事業により開発するという方針ですが、前回の保留区域設定から5年を経過した今も事業プランの熟度は高まっていません。むしろ後退しています。
前回の申請が地権者の熟議を経た具体的なプランが定まっていない段階での保留区域設定であったこと、その後の経緯に説明や情報の共有が絶対的に不足していたことが要因と考えられます。再度の保留区域設定によって、再び結論を急ぐようなことになれば、地権者が納得できる合意形成に至ることは極めて難しいのではないかと考えます。
土地区画整理事業には社会情勢によるリスクが伴いますが、採算が取れる事業プランになるか否か、現時点ではまったく見通しが立ちません。一度選定した事業協力者(大成建設)との協力関係の白紙撤回は、事業協力者はもちろんのこと、関係機関(大阪青凌学園・水無瀬病院)の事業計画に多大な影響を及ぼしました。
土地区画整理事業の事業プランは、西大和学園の中高一貫校を核にして再度事業協力者を募るとした平成25年7月第5回総会の議決決定の時点に一旦戻ることとなりますが、当該地への移転計画を進められていた大阪青凌中・高等学校は、既に若山台のサントリー研修所跡への移転を公表されています。
土地区画整理事業としての確実性もさることながら、既存の府立島本高等学校と大阪青凌中・高等学校に加えて、新たに西大和学園の中高一貫校を立地することが島本町にとってよい選択なのかという問題が生まれています。このような状況で再び保留区域申請が行われることに疑義があります。
2.政策決定の過程に住民の意識調査と熟議を経ていません
都市計画決定には市民が市民の立場から意見を言う機会が保障されています。本来ならばその前提には情報の共有が必要であり、都市計画決定手続きを行う島本町には説明責任があります。それがまったく果たされていません。多くの住民がいまなお新聞報道で知り得た西大和学園の大学立地や、同中高一貫校進出計画の情報しか持ち合わせていないのが実情です。
すなわち、これまで一度も、当該地における計画はその概要さえも住民には説明されていません。ここは非常に問題です。当該地を開発する場合、公共的なインフラ整備に補助金として市民の税金が使われる可能性は高く、将来にわたる維持管理費の負担も生じます。
現状のJR島本駅の維持管理費を少子高齢化、人口減少時代にいかにして担保していくのかという課題を直視することなく、JR島本駅西側の開発に着手するのは危険です。開発するとなれば住民にはそれなりの覚悟が要り、税金の使い道としての妥当性について充分な議論が必要です。
多額の起債を伴う可能性があり、この点においても次世代が望む島本町の未来像を把握しておかなければなりません。島本町は現在、公共施設の老朽化が進むなか、財政難と少子化を理由に既存教育施設の耐震化で対応しています。複数の企業跡地で近く大型住宅開発が予定されているようですが、保育・教育施設における定員数も深刻な課題です。
今、敢えて優良農地を壊してまで開発する必要性を見出せないというのが島本町の現状です。開発で次世代に無理な財政負担を強いないという選択が、持続可能な島本町の未来像を描きます。地権者の意向尊重は資産運用、土地活用の意向という点で欠かせないものですが、別途、住民間の熟議を経て、島本町の施策としての意思決定が求められます。
3.子育て世代の定住転入促進の視点が不可欠です
過去数年、島本町では若年層、特に子育て世代の転入者が急増しています。若者や子育て世代が理想とする島本の未来像を把握するための意向調査が必須です。転入者の多くは、交通の利便性を兼ね備えた自然環境のよさから島本町での暮らしを選択しています。
転入者やIターンの若者が、市民農園や農体験で子どもと一緒に農に親しみ、世代間の交流が生まれつつあります。農を通じた場の記憶と人的交流が、地域における住民の内発的な活動を生み、育てます。このことが地域にもたらすプラスの影響は計り知れません。
住民ホール、町立プールとかつて場の記憶を培ってきた公共施設が相次いでなくなりました。JR島本駅西側は、それらに代わる広場型の公共の場として守られていく価値があり、これまで地権者と地域住民の善意と努力によって培われた風景が、これからは誇りと愛着をもってこの町に暮らす新たな住民によって守られ、活用されることになると期待されます。
人と場所との絆が結ばれ、場所に染みついた記憶の共有が、失われてしまったかにみえる地域の絆を取り戻すことになるでしょう。なにより、次世代の住民にとっては、農地、農空間の保全は命をつなぐ食の問題です。
町の玄関駅となったJR島本駅、プラットホームから眺めるまちのシンボルとしての田園風景の存在はとりわけ重要で、ここに島本町に住む意味と誇りを見出している若者は少なくありません。地権者に一定の利益がもたらされる形で、有効な方策を打つ姿勢こそが島本町に求められているのであり、その努力なくして市街化区域に編入するというなら、それは島本町にとって取り返しのつかない損失となります。
つづく(長文なので2回に分けます)
画像
2月5日、高槻市・島本町の議員有志で
高槻水みらいセンターと
高槻クリーンセンター分室を見学しました
下水道・汚水処理は都市計画の根幹
市民の暮らしを支えるものです
これは非常に正しい判断、慧眼であったと思います。なぜなら、駅の開業を機に、西側の田園は、プラットホームから四季折々に里山里地の風情を楽しめる島本町の新たなシンボルとして脚光を浴びることとなったからです。
日本の人口が減少していく時代において、都市圏への人口集中に対応しなければならなかった高度成長期時代と同様の考え方をする必要はないとわたしは思います。島本町においても、JR島本駅の西側を、駅に近いという理由で開発する必然性は極めて少ないと考えています。
以下、大阪府の都市計画のスケジュール(5年毎)を待たずに、いつでも市街化区域に編入できる「保留区域」設定に、戸田が反対する理由を述べます。
1.当該地の開発事業計画の熟度は高まっていません
町の将来を大きく左右する重要な政策決定に、住民間の熟議を欠いたまま市街化区域への編入を急ぐことになりかねないと懸念します。当該地は組合施行の土地区画整理事業により開発するという方針ですが、前回の保留区域設定から5年を経過した今も事業プランの熟度は高まっていません。むしろ後退しています。
前回の申請が地権者の熟議を経た具体的なプランが定まっていない段階での保留区域設定であったこと、その後の経緯に説明や情報の共有が絶対的に不足していたことが要因と考えられます。再度の保留区域設定によって、再び結論を急ぐようなことになれば、地権者が納得できる合意形成に至ることは極めて難しいのではないかと考えます。
土地区画整理事業には社会情勢によるリスクが伴いますが、採算が取れる事業プランになるか否か、現時点ではまったく見通しが立ちません。一度選定した事業協力者(大成建設)との協力関係の白紙撤回は、事業協力者はもちろんのこと、関係機関(大阪青凌学園・水無瀬病院)の事業計画に多大な影響を及ぼしました。
土地区画整理事業の事業プランは、西大和学園の中高一貫校を核にして再度事業協力者を募るとした平成25年7月第5回総会の議決決定の時点に一旦戻ることとなりますが、当該地への移転計画を進められていた大阪青凌中・高等学校は、既に若山台のサントリー研修所跡への移転を公表されています。
土地区画整理事業としての確実性もさることながら、既存の府立島本高等学校と大阪青凌中・高等学校に加えて、新たに西大和学園の中高一貫校を立地することが島本町にとってよい選択なのかという問題が生まれています。このような状況で再び保留区域申請が行われることに疑義があります。
2.政策決定の過程に住民の意識調査と熟議を経ていません
都市計画決定には市民が市民の立場から意見を言う機会が保障されています。本来ならばその前提には情報の共有が必要であり、都市計画決定手続きを行う島本町には説明責任があります。それがまったく果たされていません。多くの住民がいまなお新聞報道で知り得た西大和学園の大学立地や、同中高一貫校進出計画の情報しか持ち合わせていないのが実情です。
すなわち、これまで一度も、当該地における計画はその概要さえも住民には説明されていません。ここは非常に問題です。当該地を開発する場合、公共的なインフラ整備に補助金として市民の税金が使われる可能性は高く、将来にわたる維持管理費の負担も生じます。
現状のJR島本駅の維持管理費を少子高齢化、人口減少時代にいかにして担保していくのかという課題を直視することなく、JR島本駅西側の開発に着手するのは危険です。開発するとなれば住民にはそれなりの覚悟が要り、税金の使い道としての妥当性について充分な議論が必要です。
多額の起債を伴う可能性があり、この点においても次世代が望む島本町の未来像を把握しておかなければなりません。島本町は現在、公共施設の老朽化が進むなか、財政難と少子化を理由に既存教育施設の耐震化で対応しています。複数の企業跡地で近く大型住宅開発が予定されているようですが、保育・教育施設における定員数も深刻な課題です。
今、敢えて優良農地を壊してまで開発する必要性を見出せないというのが島本町の現状です。開発で次世代に無理な財政負担を強いないという選択が、持続可能な島本町の未来像を描きます。地権者の意向尊重は資産運用、土地活用の意向という点で欠かせないものですが、別途、住民間の熟議を経て、島本町の施策としての意思決定が求められます。
3.子育て世代の定住転入促進の視点が不可欠です
過去数年、島本町では若年層、特に子育て世代の転入者が急増しています。若者や子育て世代が理想とする島本の未来像を把握するための意向調査が必須です。転入者の多くは、交通の利便性を兼ね備えた自然環境のよさから島本町での暮らしを選択しています。
転入者やIターンの若者が、市民農園や農体験で子どもと一緒に農に親しみ、世代間の交流が生まれつつあります。農を通じた場の記憶と人的交流が、地域における住民の内発的な活動を生み、育てます。このことが地域にもたらすプラスの影響は計り知れません。
住民ホール、町立プールとかつて場の記憶を培ってきた公共施設が相次いでなくなりました。JR島本駅西側は、それらに代わる広場型の公共の場として守られていく価値があり、これまで地権者と地域住民の善意と努力によって培われた風景が、これからは誇りと愛着をもってこの町に暮らす新たな住民によって守られ、活用されることになると期待されます。
人と場所との絆が結ばれ、場所に染みついた記憶の共有が、失われてしまったかにみえる地域の絆を取り戻すことになるでしょう。なにより、次世代の住民にとっては、農地、農空間の保全は命をつなぐ食の問題です。
町の玄関駅となったJR島本駅、プラットホームから眺めるまちのシンボルとしての田園風景の存在はとりわけ重要で、ここに島本町に住む意味と誇りを見出している若者は少なくありません。地権者に一定の利益がもたらされる形で、有効な方策を打つ姿勢こそが島本町に求められているのであり、その努力なくして市街化区域に編入するというなら、それは島本町にとって取り返しのつかない損失となります。
つづく(長文なので2回に分けます)
画像
2月5日、高槻市・島本町の議員有志で
高槻水みらいセンターと
高槻クリーンセンター分室を見学しました
下水道・汚水処理は都市計画の根幹
市民の暮らしを支えるものです