おかあさんへ
本当に久しぶりの手紙です。なんと、去年の秋以来!
ゴメンね、決しておかあさんを忘れている訳じゃありませんよ。
毎日仏壇にお線香を上げているし、合唱練習の時に通るお寺でも、必ず手を合わせて声を掛けていますよね。
でも、手紙としては随分間が開いてしまいました。
おかあさんがそっちに行って、もうすぐ2年ですね。
昨日は三回忌法要でみんな集まりましたよ。分かりましたか?
仙台の両親、Sの家族、新座のおばあちゃん、Mちゃん家族、全員揃いました。
Mちゃんのところは、子供たちも含めていろいろ忙しそうだったけれど、無理して集まってくれたのかもしれません。
Auちゃんはドラッグストアーの会社に就職しました。Yoクンは所沢の高校に入学しました。
Mちゃんの家族が全員揃うのは、正月以来だって。
ウチの息子はご存知のとおり、Yuは就活中、Waは学校を辞めて相変わらずバイトに夢中です。
このままフリーターになっちゃうのかね。心配だね。
おかあさんが生きていたら、Waはどうしたんだろう。同じことになっていたかな。
まぁ、今となっては分からないね。なるようにしかならないのかな。
困ったもんだね。
仙台の両親も、随分年をとりました。体も不自由そうです。
特におじいちゃんは相当体力が落ちて来ました。もうそうしょっちゅうは上京できないと思います。
おばあちゃんだって「掃除と洗濯ぐらいならやってあげられる」と言っていますが、以前みたいには動けません。もう当てには出来ないですね。
新座のおばあちゃんは、Mちゃんたちが戻ってきて大変そうだけど、それでも一緒に住めるのは良かったんじゃないかな。
お母さんもその方が安心でしょう?
仙台の両親には、向こうから来てもらっていましたが、今度は時々こちらから行ってやらなければと思います。
命日が近づいて、法要をやったりしたからか、またお母さんのことを想い出すことが多くなりました。
なんかお母さんを看取った後の僕の人生は、フロクのような気がします。
だから、もうあまりあくせく生活したくないんだよね。
出来るのなら、仕事もやめて静かに暮らしたいです。
でもそうも行かないよね。Yuの就職が決まれば一段落だけど、Waはいつまでも心配です。
住宅ローンだって残っているし、食っていけないもんね。
合唱をやっているときは、嫌な仕事のことも家事のこともすっかり忘れて楽しんでいますが、それ以外のときは、どうもやる気が出ません。
腑抜けになっちゃったのかな。
ごめんなさい、おかあさんに心配かけちゃうよね。
大丈夫です。まだ老け込むわけには行かないし、僕はお母さんの分も一生懸命元気に生きなければならないんです。
そう、頑張りますよ! おかあさんもどこからか見ていてくださいね。
また手紙を書きます。お墓にも行きますよ。今度からはYuが運転してくれるでしょう。
ではまたね。
追伸
MちゃんのところのShoクンが、Waとそっくりになってきました。
今時の若者の髪型などが似ているんですが、顔も似てきました。なんか双子みたい。
おかあさんにも見せたかったな。
ん?この前お墓に来てくれたから見た?
そう、それなら良かったです。