梅咲きぬ (文春文庫)山本 一力文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
♪「梅咲きぬ」山本一力著 文春文庫
深川の老舗料亭「江戸屋」の四代目女将秀弥の半生記。
先代の女将の一人娘の玉枝は、5歳の頃から将来の料亭女将としての心得、作法、店の営み方などを学ぶ。
先代の秀弥は、母親としての気持ちを胸の奥に仕舞い込み、女将として玉枝を厳しく鍛えてゆく。
その二人を軸に、舞踊の師匠春雅と福松夫妻、門前仲町の商人や深川の材木問屋の主たち、木場界隈の鳶衆などが織り成す人間模様は慈愛に満ちていて、読んでいて心が温かくなる。
山本一力の小説は、登場人物を巡る色彩や音、漂う風や匂いなどが、実にはっきりと読者に伝わってくる。
あたかも自分がその場に一緒にいるような錯覚に陥る。
例えば・・・
『心底から嬉しそうな笑いを浮かべた秀弥の後ろで、柿の実が黄金色に照り輝いていた』
『雲間からこぼれ出た薄い陽が、あじさいの色味を際立たせていた』
『福松はこぼれた涙のわけを問いもせず、黙って秀弥と向かい合っていた。こおろぎの鳴き声だけが、物音だった』
う~ん、やっぱりこの人の文章は凄い!
読んでいてグイグイ惹きこまれ、思わず鼻の奥がツ~ンとなる。
Bravo~です!
*今年5冊目を漸く読み終わった。なんという遅読。音楽と読書の両立は難しい・・・。