戡カンを追加しました。
甚 ジン・はなはだ・はなはだしい・いたく 甘部

解字 金文は「甚諆臧鼎ジンキゾウテイ」(西周中期)にある文字だが、鼎の最初の三文字を名称としており意味は不明。楚系簡帛(戦国)の字形は、[字統]がほぼ同じ形の説文古文の字形について、「烹炊ホウスイ(煮炊き)の器をかまどにおいた形」としている。これは後に火をつけた「煁ジン(おきかまど)」という漢字があることも理由のひとつとしている。一方[説文解字]は、篆文の字形を「甘(あまい)+匹(夫婦)」とし夫婦の甘いたのしみと解釈し、ほとんどの字典がこれに従っている。しかし、甚の音符字には「はなはだ」で解釈できる字も多いが、そのほかに「かまどと鍋」で解釈できるものも結構ある。甚の音符字を統一的に解字するためには、「烹炊の器をかまどにおいた形」がよいと考える。現代字は篆文が変化した「甚」になった。意味はカマドの火がはげしく燃えているさまから、「はなはだ」の意となる。
意味 (1)はなはだ(甚だ)。はなはだしい(甚だしい)。いたく(甚く)。度をこえる。「甚大ジンダイ」「激甚・劇甚ゲキジン」(極めてはなはだしい)「甚雨ジンウ」(大雨)(2)[国]「甚句ジンク」とは、七・七・七・五の四句からなる俗謡の一種。
イメージ
「はなはだ」(甚・湛・戡)
「カマドと鍋」(煁・堪・斟)
「形声字」(勘・椹・碪)
音の変化 ジン:甚・煁 シン:斟 カン:堪・戡・勘 タン:湛 チン:椹・碪
はなはだ
湛 タン・チン・たたえる 氵部
解字 「氵(水)+甚(はなはだ)」の会意形声。水がはなはだ多く、満ちていること。
意味 (1)たたえる(湛える)。水が満ちている。ゆたか。「湛湛タンタン」(水が満ちているさま)「湛水タンスイ」(ダムや水田に水をためること)「湛然タンゼン」(水などを充分にたたえたさま。静かなさま)(2)ふかい。「湛恩チンオン・タンオン」(深い恩。あつい恵み)
戡 カン 戈部
解字 「戈(オノ型ほこ)+甚(はなはだ)」の会意形声。オノ型ほこ(戈)を激しく用いて敵を皆殺しにすること。
意味 ころす(戡す)。かつ(戡つ)。「戡殄カンテン」(皆殺しにして絶やす。殄は、つきる・絶える意)「戡定カンテイ」(戡(か)って乱を平定する)「戡乱カンラン」(乱を平定する)「戡難カンナンの功」(災難を平定した功績)
かまどと鍋
煁 ジン 火部
解字 「火(ひ)+甚(かまど)」 の会意形声。甚は鍋をおいたかまどの象形。甚が、はなはだの意となったので、火をつけて元のかまどを表す。[説文解字]は「烓ケイ(携帯こんろ)也。火に从(したがい)甚ジン聲セイ」としている。
意味 かまど(煁)。おきかまど。火炉。「煁烓ジンケイ」(携帯コンロ)「煁(かまど)于(で)烘(た)く」(詩経・小雅・白華)
堪 カン・タン・たえる・こらえる 土部
解字 「土(つち)+甚(かまど)」 の会意。土で作られたかまど。かまどが炎をたててはげしく燃えるさまから、高熱に「たえる」、転じて「うちかつ」意となる。
意味 (1)たえる(堪える)。こらえる(堪える)。「堪忍カンニン」(こらえしのぶ)(2)うちかつ。すぐれる。「堪能タンノウ」(すぐれる。満足する)
斟 シン・くむ 斗部
解字 「斗(ひしゃく)+甚(かまどのなべ)」 の会意形声。かまどの鍋からヒシャクで中のものをくむこと。
意味 (1)くむ(斟む)。汲む。くみとる。「浅斟センシン」(浅く斟む。少量の酒を飲むこと)「浅斟低唱センシンテイショウ」(酒を軽く飲んで歌や詩を小声で口ずさむ) (2)分量をはかりながらくむ。はかりとる。相手の心や事情をはかり考える。「斟酌シンシャク」(相手の心や事情をくみとる。斟も酌も、くむ意)「斟量シンリョウ」(くむ量を加減する。=斟酌)「斟酌折衷シンシャクセッチュウ」(それぞれの事情を汲み取り、その中間を取ること) (3)くんだものをつぐ。「斟酒シンシュ」(酒をつぐ)
形声字
勘 カン 力部
解字 「力(ちから・影響をおよぼす)+甚(ジン⇒カン)」の形声。くらべる意味をあらわすが、監・鑑カンに通じて、よく知らべる意にも用いる。主な意味は、①くらべる。くらべて調べる。②かんがえる。③罪を問いただす。④[国]かん。第六感。などの多様性をもつ字である。
意味 (1)くらべる。調べる。「勘校カンコウ」(校正する)「勘合カンゴウ」(①くらべ合わせる。②許可を証明する割符)「勘合貿易カンゴウボウエキ」(勘合符による貿易)「勘定カンジョウ」(①調べ定める。②[国]①計算する。②支払い) (2)かんがえる。「勘案カンアン」(つき合わせて考える)「勘考カンコウ」(調べ考える) (3)罪を問いただす。「勘当カンドウ」(①罪を勘案して法に当てて処罰する。②縁を切って追い出す) (4)[国]かん(勘)。ぴんとくる心の働き。「山勘ヤマカン」「勘(かん)がいい」
椹 チン・ジン・さわら 木部
解字 「木(き)+甚(チン)」 の形声。チンは砧チン(きぬた。布を打つ台)に通じ、木製の台をいう。日本では、樹木の「さわら」に当てる。
意味 (1)あてぎ。木を割るとき下におく台。「椹質チンシツ」(物を打ったり切ったりする台)(2)[国]さわら(椹)。ヒノキ科の常緑高木。ヒノキによく似た木で高さ30mに達する。木曽五木のひとつ。
碪 チン・きぬた 石部
解字 「石(いし)+甚(チン)」 の形声。チンは砧チン(きぬた。布を打つ台)に通じ、石製の台をいう。砧チンの異体字。
意味 (1)きぬた(碪)。布地などを打つとき使う石の台。碪をうつ。「碪声チンセイ」(碪を打つ音)
<紫色は常用漢字>
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甚 ジン・はなはだ・はなはだしい・いたく 甘部

解字 金文は「甚諆臧鼎ジンキゾウテイ」(西周中期)にある文字だが、鼎の最初の三文字を名称としており意味は不明。楚系簡帛(戦国)の字形は、[字統]がほぼ同じ形の説文古文の字形について、「烹炊ホウスイ(煮炊き)の器をかまどにおいた形」としている。これは後に火をつけた「煁ジン(おきかまど)」という漢字があることも理由のひとつとしている。一方[説文解字]は、篆文の字形を「甘(あまい)+匹(夫婦)」とし夫婦の甘いたのしみと解釈し、ほとんどの字典がこれに従っている。しかし、甚の音符字には「はなはだ」で解釈できる字も多いが、そのほかに「かまどと鍋」で解釈できるものも結構ある。甚の音符字を統一的に解字するためには、「烹炊の器をかまどにおいた形」がよいと考える。現代字は篆文が変化した「甚」になった。意味はカマドの火がはげしく燃えているさまから、「はなはだ」の意となる。
意味 (1)はなはだ(甚だ)。はなはだしい(甚だしい)。いたく(甚く)。度をこえる。「甚大ジンダイ」「激甚・劇甚ゲキジン」(極めてはなはだしい)「甚雨ジンウ」(大雨)(2)[国]「甚句ジンク」とは、七・七・七・五の四句からなる俗謡の一種。
イメージ
「はなはだ」(甚・湛・戡)
「カマドと鍋」(煁・堪・斟)
「形声字」(勘・椹・碪)
音の変化 ジン:甚・煁 シン:斟 カン:堪・戡・勘 タン:湛 チン:椹・碪
はなはだ
湛 タン・チン・たたえる 氵部
解字 「氵(水)+甚(はなはだ)」の会意形声。水がはなはだ多く、満ちていること。
意味 (1)たたえる(湛える)。水が満ちている。ゆたか。「湛湛タンタン」(水が満ちているさま)「湛水タンスイ」(ダムや水田に水をためること)「湛然タンゼン」(水などを充分にたたえたさま。静かなさま)(2)ふかい。「湛恩チンオン・タンオン」(深い恩。あつい恵み)
戡 カン 戈部
解字 「戈(オノ型ほこ)+甚(はなはだ)」の会意形声。オノ型ほこ(戈)を激しく用いて敵を皆殺しにすること。
意味 ころす(戡す)。かつ(戡つ)。「戡殄カンテン」(皆殺しにして絶やす。殄は、つきる・絶える意)「戡定カンテイ」(戡(か)って乱を平定する)「戡乱カンラン」(乱を平定する)「戡難カンナンの功」(災難を平定した功績)
かまどと鍋
煁 ジン 火部
解字 「火(ひ)+甚(かまど)」 の会意形声。甚は鍋をおいたかまどの象形。甚が、はなはだの意となったので、火をつけて元のかまどを表す。[説文解字]は「烓ケイ(携帯こんろ)也。火に从(したがい)甚ジン聲セイ」としている。
意味 かまど(煁)。おきかまど。火炉。「煁烓ジンケイ」(携帯コンロ)「煁(かまど)于(で)烘(た)く」(詩経・小雅・白華)
堪 カン・タン・たえる・こらえる 土部
解字 「土(つち)+甚(かまど)」 の会意。土で作られたかまど。かまどが炎をたててはげしく燃えるさまから、高熱に「たえる」、転じて「うちかつ」意となる。
意味 (1)たえる(堪える)。こらえる(堪える)。「堪忍カンニン」(こらえしのぶ)(2)うちかつ。すぐれる。「堪能タンノウ」(すぐれる。満足する)
斟 シン・くむ 斗部
解字 「斗(ひしゃく)+甚(かまどのなべ)」 の会意形声。かまどの鍋からヒシャクで中のものをくむこと。
意味 (1)くむ(斟む)。汲む。くみとる。「浅斟センシン」(浅く斟む。少量の酒を飲むこと)「浅斟低唱センシンテイショウ」(酒を軽く飲んで歌や詩を小声で口ずさむ) (2)分量をはかりながらくむ。はかりとる。相手の心や事情をはかり考える。「斟酌シンシャク」(相手の心や事情をくみとる。斟も酌も、くむ意)「斟量シンリョウ」(くむ量を加減する。=斟酌)「斟酌折衷シンシャクセッチュウ」(それぞれの事情を汲み取り、その中間を取ること) (3)くんだものをつぐ。「斟酒シンシュ」(酒をつぐ)
形声字
勘 カン 力部
解字 「力(ちから・影響をおよぼす)+甚(ジン⇒カン)」の形声。くらべる意味をあらわすが、監・鑑カンに通じて、よく知らべる意にも用いる。主な意味は、①くらべる。くらべて調べる。②かんがえる。③罪を問いただす。④[国]かん。第六感。などの多様性をもつ字である。
意味 (1)くらべる。調べる。「勘校カンコウ」(校正する)「勘合カンゴウ」(①くらべ合わせる。②許可を証明する割符)「勘合貿易カンゴウボウエキ」(勘合符による貿易)「勘定カンジョウ」(①調べ定める。②[国]①計算する。②支払い) (2)かんがえる。「勘案カンアン」(つき合わせて考える)「勘考カンコウ」(調べ考える) (3)罪を問いただす。「勘当カンドウ」(①罪を勘案して法に当てて処罰する。②縁を切って追い出す) (4)[国]かん(勘)。ぴんとくる心の働き。「山勘ヤマカン」「勘(かん)がいい」
椹 チン・ジン・さわら 木部
解字 「木(き)+甚(チン)」 の形声。チンは砧チン(きぬた。布を打つ台)に通じ、木製の台をいう。日本では、樹木の「さわら」に当てる。
意味 (1)あてぎ。木を割るとき下におく台。「椹質チンシツ」(物を打ったり切ったりする台)(2)[国]さわら(椹)。ヒノキ科の常緑高木。ヒノキによく似た木で高さ30mに達する。木曽五木のひとつ。
碪 チン・きぬた 石部
解字 「石(いし)+甚(チン)」 の形声。チンは砧チン(きぬた。布を打つ台)に通じ、石製の台をいう。砧チンの異体字。
意味 (1)きぬた(碪)。布地などを打つとき使う石の台。碪をうつ。「碪声チンセイ」(碪を打つ音)
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