八 ハチ・や・やつ・やっつ・よう 八部
解字 左右二つに分けたことを表す指事文字。仮借カシャ(当て字)して数字の八に当てる。刀をつけて分(わける)となるので分の原字ともいえる。八は部首となる。
意味 (1)やっつ(八つ)。数の名。やたび。はちばんめ。「八度ハチド」「八番目ハチバンメ」「八景ハッケイ」「八日ようか」 (2)多くの。数の多いさま。「八重やえ」「八つ裂き」
参考 八は、部首「八はち」になる。八の意味を表すのでなく、下部が八の形をしている漢字を便宜的に分類しているにすぎない。主な字は以下のとおり。
八ハチ・公コウ・六ロク・共キョウ・兵ヘイ・其キ・具グ・典テン・兼ケン
これらの文字は、いずれも分解不可能な象形文字や会意文字で、本来、部首別に分類するのは無理な字。そこで漢字の下部に八のかたちがあるものを無理やり八部とした。部首は意味を表すという部首別分類の矛盾がここにあらわれている。このうち、公コウ・六ロク・共キョウ・其キ・具グ・典テン・兼ケンは、音符となり多くの音符家族字を作っている。
イメージ
「やっつ」(八)
「ハの音」(叭)
音の変化 ハチ:八 ハ:叭
ハの音
叭 ハ 口部
解字 「口(くち)+八(ハ)」の形声。口から出るハの音。ハの発音を表す。
意味 「喇叭ラッパ」に用いられる字。喇叭とは、オランダ語roeperから来たといわれ、先が大きく開いている管に息を吹きいれ音を出す楽器をいう。「進軍喇叭シングンラッパ」「喇叭飲み」(瓶の口に直接口をつけて飲むこと)
分 ブン <わける>
分 ブン・フン・ブ・わける・わかれる・わかる・わかつ 刀部
解字 「八(左右にわかれる)+刀(かたな)」の会意。八は左右にわかれる形。これに刀を加え、二つに切り分けることを示し、分ける意味になる。
意味 (1)わける(分ける)。いくつかにわける。「分類ブンルイ」「分解ブンカイ」 (2)くばる。「分配ブンパイ」 (3)わかれる(分かれる)。ばらばらになる。「分散ブンサン」「分裂ブンレツ」 (4)物質の要素。「分子ブンシ」「成分セイブン」 (5)状態。程度。「気分キブン」
イメージ
「わける」(分・頒・貧・盆・躮)
「細かく分かれる」(紛・雰・氛・芬・枌・粉・扮)
「同音代替」(忿)
音の変化 ブン:分 フン:紛・雰・氛・芬・枌・粉・扮・忿 ハン:頒 ヒン:貧 ボン:盆 せがれ:躮
わける
頒 ハン・わける 頁部
解字 「頁(あたま)+分(わける)」の会意形声。あたま数にわけること。斑ハン(まだら)に通じ、まだらの意もある。
意味 (1)わける(頒ける)。わけあたえる。広く行きわたらせる。「頒布ハンプ」(多くの人に配り分ける)「頒価ハンカ」(頒布する時の値段) (2)まだら。「頒白ハンバク」(しらが混じりの頭髪)
貧 ヒン・ビン・まずしい 貝部
解字 「貝(財貨)+分(わける)」の会意形声。財貨を分けてしまい、手元の財貨が少なくなるので、まずしい意味になる。
意味 (1)まずしい(貧しい)。みすぼらしい。「貧困ヒンコン」「貧民ヒンミン」「貧相ヒンソウ」「貧乏ビンボウ」(まずしいこと) (2)たりない。劣る。「貧血ヒンケツ」「貧弱ヒンジャク」
盆 ボン 皿部
曾孟嬭諫盆ソモウダイカンボン(「每日頭條」より)
解字 「皿(うつわ)+分(分れる)」の会意形声。每日頭條という香港のメディアに「春秋時期の盆はみな蓋がある」という見出しで5点の盆が紹介されている。写真は、その中のひとつ「曾孟嬭諫盆ソモウダイカンボン」であるが、上に蓋があり両側に取っ手がついた器である。用途は盛食器とされ、コース料理のひとつを器にいれて卓まで運び、そこで盛り付けをしたと思われる。形は底が平らで上に開いた形をしている。盆の字形は春秋金文が最初であり、実際に残る器に蓋が付属する事実は字の成立を考えるとき重視しなければならない。そこで盆は、「器(皿)の上に分かれる蓋のある容器」と考えたい(私見です)。その後、盆の蓋はなくなり下の形は、ほぼそのまま受けつがれている。後漢の[説文解字]は「盎オウ(はち)也(なり)。皿に従い分の聲(声)。発音は步奔切(ホン・ボン)」とする。ただし、日本では浅く平たい皿状のものもいう。
意味 (1)ぼん(盆)。底が平らで上に開いた容器。はち。「盆栽ボンサイ」「盆景ボンケイ」(盆の上に石や砂・植物を配してその風雅を味わうこと) (2)盆のような地形。「盆地ボンチ」「盆池ボンチ」 (3)[国]ぼん(盆)。浅く平たい、物を載せる道具。「角盆カクボン」(四角い平盆) (4)[仏]梵語のullambanaウランバナの音訳字:盂蘭盆に使われる字。「盂蘭盆ウラボン」とは、先祖の霊を迎えて供養する行事。「盂蘭盆会(え)」とも。「盆踊り」(祖霊の霊を迎える踊り)
躮 <国字> せがれ 身部
解字 「身(からだ)+分(わかれる)」の会意。自分の身体から分かれた分身の意で、自分の息子をいう。
意味 せがれ(躮)。自分の息子を謙遜していう。倅ソツとも書く。
細かく分かれる
紛 フン・まぎれる・まぎらわす・まぎらわしい 糸部
解字 「糸(いと)+分(分散する)」の会意形声。糸があちこち分散し入りみだれること。
意味 (1)まぎれる(紛れる)。「紛失フンシツ」 (2)いりみだれる。「紛糾フンキュウ」「内紛ナイフン」「紛争フンソウ」
雰 フン 雨部
解字 「雨(あめ)+分(細かくわかれる)」の会意形声。雨が細かくわかれて、できるきり。また、もや。転じて、あたりにただよう気配、その場の空気等の意となる。
意味 (1)きり。もや。 (2)き(気)。大気。気分。けはい。「雰囲気フンイキ」
氛 フン 气部
解字 「气(空中にただようもの)+分(細かくわかれる)」の会意形声。細かく分かれて空中にたちこめる気をいう。
意味 (1)空中にたちこめる気。天の気。=雰フン。「氛囲気フンイキ=雰囲気」 (2)吉凶や禍福を暗示する気。「氛フンを望む」(氛を観測する) (3)氛のうちの凶や禍に属する気。悪い気配。わざわい。「妖氛ヨウフン」(災いを及ぼす気)「氛翳フンエイ」(不吉な気。翳は、かげの意)「氛祥フンショウ」(不吉な気と、めでたい気)
芬 フン・かおる 艸部
解字 「艸(草花)+分(細かくわかれる)」の会意形声。草花の香りが分散すること。
意味 かおる(芬る)。かおり。こうばしい。「芬芬フンプン」(よい香りがする)「芬芳フンポウ」(こうばしいにおい)「芬郁フンイク」(かおりの高いさま)
枌 フン・そぎ 木部
解字 「木(き)+分(細かくわける)」の会意形声。木を薄くそいだ板をいう。
意味 (1)[日]そぎ(枌)。木を薄くそいだ板。「枌板そぎいた」 (2)ニレの一種。樹皮が白い。「枌楡フンユ」(ニレ。枌も楡も、にれの意)
粉 フン・こ・こな 米部
解字 「米(こめ)+分(細かくする)」の会意形声。米などの穀類の実を細かく磨りつぶして粉にすること。また、できた粉をいう。
意味 (1)こ(粉)。こな(粉)。「粉末フンマツ」「胡粉ゴフン」(白色顔料) (2)粉にする。「粉骨砕身フンコツサイシン」(骨を粉にし身を砕くほど努力する) (3)粉のおしろい。「粉白フンパク」 (4)かざる。「粉飾フンショク」(①よくみせようとして装い飾る。②実情を隠して見かけをよくする)
扮 フン・ハン 扌部
解字 「扌(て)+分(=粉。おしろい)」の会意形声。手でおしろいをつけて化粧すること。転じて、身なりを飾ること。
意味 よそおう。かざる。「扮飾フンショク」(①身なりを飾る。②化粧する) 「扮装フンソウ」(ある人物に似せてよそおう)
同音代替
忿 フン・いかる 心部
解字 「心(こころ)+分(フン)」の形声。フンは憤フン(いきどおる)に通じ、心からいかること。
意味 いかる(忿る)。「忿然フンゼン」(=憤然)「忿怒フンヌ」(=憤怒)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
解字 左右二つに分けたことを表す指事文字。仮借カシャ(当て字)して数字の八に当てる。刀をつけて分(わける)となるので分の原字ともいえる。八は部首となる。
意味 (1)やっつ(八つ)。数の名。やたび。はちばんめ。「八度ハチド」「八番目ハチバンメ」「八景ハッケイ」「八日ようか」 (2)多くの。数の多いさま。「八重やえ」「八つ裂き」
参考 八は、部首「八はち」になる。八の意味を表すのでなく、下部が八の形をしている漢字を便宜的に分類しているにすぎない。主な字は以下のとおり。
八ハチ・公コウ・六ロク・共キョウ・兵ヘイ・其キ・具グ・典テン・兼ケン
これらの文字は、いずれも分解不可能な象形文字や会意文字で、本来、部首別に分類するのは無理な字。そこで漢字の下部に八のかたちがあるものを無理やり八部とした。部首は意味を表すという部首別分類の矛盾がここにあらわれている。このうち、公コウ・六ロク・共キョウ・其キ・具グ・典テン・兼ケンは、音符となり多くの音符家族字を作っている。
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「やっつ」(八)
「ハの音」(叭)
音の変化 ハチ:八 ハ:叭
ハの音
叭 ハ 口部
解字 「口(くち)+八(ハ)」の形声。口から出るハの音。ハの発音を表す。
意味 「喇叭ラッパ」に用いられる字。喇叭とは、オランダ語roeperから来たといわれ、先が大きく開いている管に息を吹きいれ音を出す楽器をいう。「進軍喇叭シングンラッパ」「喇叭飲み」(瓶の口に直接口をつけて飲むこと)
分 ブン <わける>
分 ブン・フン・ブ・わける・わかれる・わかる・わかつ 刀部
解字 「八(左右にわかれる)+刀(かたな)」の会意。八は左右にわかれる形。これに刀を加え、二つに切り分けることを示し、分ける意味になる。
意味 (1)わける(分ける)。いくつかにわける。「分類ブンルイ」「分解ブンカイ」 (2)くばる。「分配ブンパイ」 (3)わかれる(分かれる)。ばらばらになる。「分散ブンサン」「分裂ブンレツ」 (4)物質の要素。「分子ブンシ」「成分セイブン」 (5)状態。程度。「気分キブン」
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「わける」(分・頒・貧・盆・躮)
「細かく分かれる」(紛・雰・氛・芬・枌・粉・扮)
「同音代替」(忿)
音の変化 ブン:分 フン:紛・雰・氛・芬・枌・粉・扮・忿 ハン:頒 ヒン:貧 ボン:盆 せがれ:躮
わける
頒 ハン・わける 頁部
解字 「頁(あたま)+分(わける)」の会意形声。あたま数にわけること。斑ハン(まだら)に通じ、まだらの意もある。
意味 (1)わける(頒ける)。わけあたえる。広く行きわたらせる。「頒布ハンプ」(多くの人に配り分ける)「頒価ハンカ」(頒布する時の値段) (2)まだら。「頒白ハンバク」(しらが混じりの頭髪)
貧 ヒン・ビン・まずしい 貝部
解字 「貝(財貨)+分(わける)」の会意形声。財貨を分けてしまい、手元の財貨が少なくなるので、まずしい意味になる。
意味 (1)まずしい(貧しい)。みすぼらしい。「貧困ヒンコン」「貧民ヒンミン」「貧相ヒンソウ」「貧乏ビンボウ」(まずしいこと) (2)たりない。劣る。「貧血ヒンケツ」「貧弱ヒンジャク」
盆 ボン 皿部
曾孟嬭諫盆ソモウダイカンボン(「每日頭條」より)
解字 「皿(うつわ)+分(分れる)」の会意形声。每日頭條という香港のメディアに「春秋時期の盆はみな蓋がある」という見出しで5点の盆が紹介されている。写真は、その中のひとつ「曾孟嬭諫盆ソモウダイカンボン」であるが、上に蓋があり両側に取っ手がついた器である。用途は盛食器とされ、コース料理のひとつを器にいれて卓まで運び、そこで盛り付けをしたと思われる。形は底が平らで上に開いた形をしている。盆の字形は春秋金文が最初であり、実際に残る器に蓋が付属する事実は字の成立を考えるとき重視しなければならない。そこで盆は、「器(皿)の上に分かれる蓋のある容器」と考えたい(私見です)。その後、盆の蓋はなくなり下の形は、ほぼそのまま受けつがれている。後漢の[説文解字]は「盎オウ(はち)也(なり)。皿に従い分の聲(声)。発音は步奔切(ホン・ボン)」とする。ただし、日本では浅く平たい皿状のものもいう。
意味 (1)ぼん(盆)。底が平らで上に開いた容器。はち。「盆栽ボンサイ」「盆景ボンケイ」(盆の上に石や砂・植物を配してその風雅を味わうこと) (2)盆のような地形。「盆地ボンチ」「盆池ボンチ」 (3)[国]ぼん(盆)。浅く平たい、物を載せる道具。「角盆カクボン」(四角い平盆) (4)[仏]梵語のullambanaウランバナの音訳字:盂蘭盆に使われる字。「盂蘭盆ウラボン」とは、先祖の霊を迎えて供養する行事。「盂蘭盆会(え)」とも。「盆踊り」(祖霊の霊を迎える踊り)
躮 <国字> せがれ 身部
解字 「身(からだ)+分(わかれる)」の会意。自分の身体から分かれた分身の意で、自分の息子をいう。
意味 せがれ(躮)。自分の息子を謙遜していう。倅ソツとも書く。
細かく分かれる
紛 フン・まぎれる・まぎらわす・まぎらわしい 糸部
解字 「糸(いと)+分(分散する)」の会意形声。糸があちこち分散し入りみだれること。
意味 (1)まぎれる(紛れる)。「紛失フンシツ」 (2)いりみだれる。「紛糾フンキュウ」「内紛ナイフン」「紛争フンソウ」
雰 フン 雨部
解字 「雨(あめ)+分(細かくわかれる)」の会意形声。雨が細かくわかれて、できるきり。また、もや。転じて、あたりにただよう気配、その場の空気等の意となる。
意味 (1)きり。もや。 (2)き(気)。大気。気分。けはい。「雰囲気フンイキ」
氛 フン 气部
解字 「气(空中にただようもの)+分(細かくわかれる)」の会意形声。細かく分かれて空中にたちこめる気をいう。
意味 (1)空中にたちこめる気。天の気。=雰フン。「氛囲気フンイキ=雰囲気」 (2)吉凶や禍福を暗示する気。「氛フンを望む」(氛を観測する) (3)氛のうちの凶や禍に属する気。悪い気配。わざわい。「妖氛ヨウフン」(災いを及ぼす気)「氛翳フンエイ」(不吉な気。翳は、かげの意)「氛祥フンショウ」(不吉な気と、めでたい気)
芬 フン・かおる 艸部
解字 「艸(草花)+分(細かくわかれる)」の会意形声。草花の香りが分散すること。
意味 かおる(芬る)。かおり。こうばしい。「芬芬フンプン」(よい香りがする)「芬芳フンポウ」(こうばしいにおい)「芬郁フンイク」(かおりの高いさま)
枌 フン・そぎ 木部
解字 「木(き)+分(細かくわける)」の会意形声。木を薄くそいだ板をいう。
意味 (1)[日]そぎ(枌)。木を薄くそいだ板。「枌板そぎいた」 (2)ニレの一種。樹皮が白い。「枌楡フンユ」(ニレ。枌も楡も、にれの意)
粉 フン・こ・こな 米部
解字 「米(こめ)+分(細かくする)」の会意形声。米などの穀類の実を細かく磨りつぶして粉にすること。また、できた粉をいう。
意味 (1)こ(粉)。こな(粉)。「粉末フンマツ」「胡粉ゴフン」(白色顔料) (2)粉にする。「粉骨砕身フンコツサイシン」(骨を粉にし身を砕くほど努力する) (3)粉のおしろい。「粉白フンパク」 (4)かざる。「粉飾フンショク」(①よくみせようとして装い飾る。②実情を隠して見かけをよくする)
扮 フン・ハン 扌部
解字 「扌(て)+分(=粉。おしろい)」の会意形声。手でおしろいをつけて化粧すること。転じて、身なりを飾ること。
意味 よそおう。かざる。「扮飾フンショク」(①身なりを飾る。②化粧する) 「扮装フンソウ」(ある人物に似せてよそおう)
同音代替
忿 フン・いかる 心部
解字 「心(こころ)+分(フン)」の形声。フンは憤フン(いきどおる)に通じ、心からいかること。
意味 いかる(忿る)。「忿然フンゼン」(=憤然)「忿怒フンヌ」(=憤怒)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
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